「なまえ!なまえ!」

どんどん、と扉を叩く音と彼の声。彼はいつも私がここから出るのを待っている。何度も何度もここに来て、私の名前を呼ぶ。どんなに名前を呼ばれようが私には自分でここから出ようとは思っていなかった。

しばらくして何も聞こえなくなった。聞こえなくなった彼の声に、訪れた静寂に、どこか寂しいと感じる自分がいた。
周りが恐くなって自分からここに来た。
ここに来て、扉を閉ざして、閉じこもって。ここから出る勇気も寂しいと言う勇気もない。
私はホントに弱虫だ…。

あれからどれくらいたったのだろう。最近は彼の声を聞いてない。
ついに愛想を尽かされたかな。
ぽろり、と涙が頬を伝った。

「え?なんで……」

泣きたくなんてないのに、涙は止まらない。
自分からここに来たのに、自分からここに閉じこもっているのに……
よく分からない感情がぐるぐると頭の中を埋めていく。ぽろぽろ、ぽろぽろ…と私の意思に反して涙は零れる。

がちゃり、と背後で扉の開く音がした。

「なんだよ。鍵かかってないじゃん。」

滲む視界にじわりと映る黒。

「た、か…お……?」

扉の前に立っているのはいつも私を呼んでいた彼…高尾和成の姿。高尾は私の方へゆっくりと近づくと、私に目線を合わせるようにしゃがんだ。ぐい、と高尾が涙を指で拭う。

「どうして…?」
「扉、鍵かかってなかった。今まで全然気づかなかったっての。」

ふわり、と高尾を匂いがしたと思ったら抱き締められてた。

「なまえ、いい加減ここから出てこいよ。」

その言葉が何かを壊した。
止まったと思った涙が零れ高尾の肩を濡らす。

「ほん、とは…さみし、かった…!…でも…こわ、くって……」
「なまえ。寂しくなったら俺がいる。恐くなったら俺が助けてやる。だから……」

子供みたいに泣きじゃくる私の目を真っ直ぐに見て高尾は言った。

「だからもう、こんなところで一人で泣くなよ。」


弱虫な私を救うのはいつもあなたなの







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