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違う、とまたキルアは言った。
だけど、イルミは更にまくし立てる。
「ゴンのそばにいれば、いつかお前は彼を殺したくなるよ。殺せるか殺せないか試したくなる。何故ならお前は根っからの人殺しだから。人殺しになるためのありあまる才能を持って生まれてきて、人殺しになるためのあらゆる教育を受けてきた。細胞の一欠けらまでお前は人殺しなんだ」
その言葉は私の胸にまで突き刺さった。
イルミを見れば、何だか複雑な顔をしている気がする。
ほんの少しの違い。
だけど、イルミはどこか自分に言い聞かせているようにも思える。
再びキルアに目を向けると、キルアの目には光が写っていない。
幼い頃の私と再び重なって見える。
「ゴンと名前と友達になりたいだと?お前らとっくにダチどうしだろうがよ……!」
私までも闇に堕ちそうになっていると、レオリオが叫んだ声が私とキルアの鼓膜を震わせた。
少しずつ取り戻していく色づいた世界。
「そうか。まいったな。あっちはもう友達のつもりなのか。―よし、ゴンを殺そう」
次に私の耳に届いたのはイルミの冷徹な声だった。
ゴンを本気で殺しに行こうとするイルミを、他の受験生達が必死に止める。
だけど、私は動けないでいた。
これはあくまでキルア達ゾルディック家の話なのだ。
だったら、キルアが乗り越えないことには根本的な解決にならない。
私はキルアをじっと見た。
私はただの友人でしかない。
だったら、今やるべきはイルミを止めることじゃない。
イルミを止めるのはキルアの出方を見た後だ。
「そうだ。まず合格してからゴンを殺そう。―友達のために俺と戦えるかい。出来ないよね。何故ならお前は友達なんかより今この場で俺を倒せるか倒せないかのほうが大事だからだ」
私が黙って成り行きを見守っていると、イルミが考えを変えたようで、キルアの前に立った。
嫌な念をキルアのほうに向けると、キルアは小さな声で絞り出すかのようにまいったと言った。
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