2
人の死に触れたとき、唯一喜びを感じる。
そう教えたのはイルミとシルバだ。
…暗殺一家に生まれた者の宿命。
周りが息を飲んだのが分かった。
私は、幼い頃両親に言われた同じような教訓を思い出し、ズキリと胸が痛んだ。
「たしかに―ハンターになりたいと思っているわけじゃない。けど、俺にだって欲しいものくらいある」
不意に力強い声でキルアがそう言った。
しかし、イルミはすぐに否定する。
それでもある、とイルミを真っ直ぐに見据えて言うキルアにイルミは言ってごらん、と言って先を促した。
「ゴンと……」
急に弱くなった声。
視線をさ迷わせたキルアは私をちらりと見た。
『キルア……』
私は俯いていた顔を上げ、キルアの名前を小さく声にした。
「ゴンと名前と友達になりたい。もう人殺しなんてうんざりだ。普通にゴンと名前と友達になって、普通に遊びたい」
「無理だね。お前に友達なんか出来っこないよ」
キルアは躊躇いがちに、だけどはっきりとそう言った。
しかし、イルミは何の感情もこもらない声で、平然と否定した。
「お前は人というものを殺せるか殺せないかでしか判断出来ない。そう教えこまれたからね。今のお前はゴンと名前が眩しすぎて量りきれないでいるだけだ。友達になりたいわけじゃない」
「違う……」
「行ったことのない土地をユートピアのように夢想しているだけだよ、キル」
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