修行再開


カルト君との仕事を終え、数日間ゾルディック家で過ごし、少し予定より早いけれど天空闘技場へと帰ってきた。


『ありがとう、イルミ。送ってくれて』

「いいよ。またいつでも遊びにおいで」


ちゅ、と軽く額にキスを落とし合い、別れる。

私はよし、と意気込んでからゴンの部屋へと向かった。



中の気配を伺い、中に入る。

すると、いち早く気付いたキルアが大声を上げた。


「あーっ!名前、お前いつ帰ってきたんだよ!!てか、帰るなら連絡しろよ!」

『あはは、驚かせたくてさ、ごめんね』


キルアの頬に挨拶程度のキスをして宥めれば、途端に借りてきた猫のように大人しくなる。

そんな姿に笑いを漏らしながら、ゴンの様子を見ればすっかり元気が有り余っていそうな程だ。


「おかえり、名前。今からウイングさんのところに行くんだけど、名前もおいでよ」


その言葉に頷き、多少まだ拗ねているキルアとゴンの手を取り、ウイングさんのところへと向かった。


『お久しぶりです、ウイングさん』


そう言って中に入れば、ウイングさんは穏やかな笑みで迎え入れてくれる。


「お久しぶりです。怪我はもうすっかり良さそうですね」


はい、大丈夫です、と答えて中に入る。

中にはズシ君も居た。

私は自然と3人より少し後ろへ行き、成り行きを見守った。


「キルア君、ゴン君。今日から2人がズシと共に修行することになります。名前さんは主にサポートを頼みます」


ウイングさんの言葉に頷くと、ウイングさんがゴンを褒めた。

よく約束を破らなかったと。

そしてゴンに纏をやるように言う。

すると、誓の糸がぶちりと切れた。

それにしても、ゴンは綺麗な纏をするようになったなあ。

淀みなく、流れるようで、とても綺麗。

ゴンは久々なのに出来た事に感動していて、それと同時に切れた糸についても感動している。

全く、ゴンは相変わらず純粋だと思う。


「ねえ、ウイングさん。ヒソカとカストロの試合観た?ヒソカの能力って何なの?」


不意にキルアが口を挟む。

それに対し、ウイングさんはヒソカとカストロさんの試合を見せた。

そして、ズシ君に凝をするように言う。

私も習って凝をし、画面を見る。

……15本か。

ズシ君が13本だと答えると、ウイングさんの目が私に向く。


「名前さんは何本だと思いますか?」

『15本、ですね』

「正解です。あなたの凝はとても綺麗なのでもう一度やってもらえませんか?」


そう言われ、私はもう一度凝をする。

自然と体が馴染んでいて、凝は意識せずとも出来る。

するすると流れるように目に集まるオーラに感嘆の声がどこからか漏れた。


「素晴らしい。ここまで自然に凝が出来るのは中々いません」


ウイングさんに褒められ、私は照れる。

真っ直ぐに褒めてくれる人なんてゴン以外にいないから、気恥ずかしい。

ウイングさんはキルアとゴンに、自分の資質を見極め、そして凝を完成させるように課題を出した。

2人が元気に返事したのを見て、私は頬が緩む。


「よーし、じゃあ名前をこってり絞めるぞ」


だがしかし、キルアのその一言により頬が引き攣る。


『は、え、何で』

「黙って居なくなって、黙って帰ってきて、あれで終わりなわけないだろ。それから、凝のこととか居なかった時のこととか、聞きたいことはいっぱいあんだよ」


どこか拗ねたように言うキルアに何も言えず、渋々頷いた。



修行再開
〈ほら、早く帰るぞ〉

《引っ張らなくても帰るよー》

〈お前、離したらまたどっか行きそうだからさ〉

《もう黙ってどっか行かないよ》

〈あーあー…。キルアも素直じゃないなあ〉


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