修行再開
カルト君との仕事を終え、数日間ゾルディック家で過ごし、少し予定より早いけれど天空闘技場へと帰ってきた。
『ありがとう、イルミ。送ってくれて』
「いいよ。またいつでも遊びにおいで」
ちゅ、と軽く額にキスを落とし合い、別れる。
私はよし、と意気込んでからゴンの部屋へと向かった。
▽
中の気配を伺い、中に入る。
すると、いち早く気付いたキルアが大声を上げた。
「あーっ!名前、お前いつ帰ってきたんだよ!!てか、帰るなら連絡しろよ!」
『あはは、驚かせたくてさ、ごめんね』
キルアの頬に挨拶程度のキスをして宥めれば、途端に借りてきた猫のように大人しくなる。
そんな姿に笑いを漏らしながら、ゴンの様子を見ればすっかり元気が有り余っていそうな程だ。
「おかえり、名前。今からウイングさんのところに行くんだけど、名前もおいでよ」
その言葉に頷き、多少まだ拗ねているキルアとゴンの手を取り、ウイングさんのところへと向かった。
『お久しぶりです、ウイングさん』
そう言って中に入れば、ウイングさんは穏やかな笑みで迎え入れてくれる。
「お久しぶりです。怪我はもうすっかり良さそうですね」
はい、大丈夫です、と答えて中に入る。
中にはズシ君も居た。
私は自然と3人より少し後ろへ行き、成り行きを見守った。
「キルア君、ゴン君。今日から2人がズシと共に修行することになります。名前さんは主にサポートを頼みます」
ウイングさんの言葉に頷くと、ウイングさんがゴンを褒めた。
よく約束を破らなかったと。
そしてゴンに纏をやるように言う。
すると、誓の糸がぶちりと切れた。
それにしても、ゴンは綺麗な纏をするようになったなあ。
淀みなく、流れるようで、とても綺麗。
ゴンは久々なのに出来た事に感動していて、それと同時に切れた糸についても感動している。
全く、ゴンは相変わらず純粋だと思う。
「ねえ、ウイングさん。ヒソカとカストロの試合観た?ヒソカの能力って何なの?」
不意にキルアが口を挟む。
それに対し、ウイングさんはヒソカとカストロさんの試合を見せた。
そして、ズシ君に凝をするように言う。
私も習って凝をし、画面を見る。
……15本か。
ズシ君が13本だと答えると、ウイングさんの目が私に向く。
「名前さんは何本だと思いますか?」
『15本、ですね』
「正解です。あなたの凝はとても綺麗なのでもう一度やってもらえませんか?」
そう言われ、私はもう一度凝をする。
自然と体が馴染んでいて、凝は意識せずとも出来る。
するすると流れるように目に集まるオーラに感嘆の声がどこからか漏れた。
「素晴らしい。ここまで自然に凝が出来るのは中々いません」
ウイングさんに褒められ、私は照れる。
真っ直ぐに褒めてくれる人なんてゴン以外にいないから、気恥ずかしい。
ウイングさんはキルアとゴンに、自分の資質を見極め、そして凝を完成させるように課題を出した。
2人が元気に返事したのを見て、私は頬が緩む。
「よーし、じゃあ名前をこってり絞めるぞ」
だがしかし、キルアのその一言により頬が引き攣る。
『は、え、何で』
「黙って居なくなって、黙って帰ってきて、あれで終わりなわけないだろ。それから、凝のこととか居なかった時のこととか、聞きたいことはいっぱいあんだよ」
どこか拗ねたように言うキルアに何も言えず、渋々頷いた。
修行再開〈ほら、早く帰るぞ〉
《引っ張らなくても帰るよー》
〈お前、離したらまたどっか行きそうだからさ〉
《もう黙ってどっか行かないよ》
〈あーあー…。キルアも素直じゃないなあ〉
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