仕事完了
カルト君と2人で正装に着替えて、潜入先へと向かう。
中々屋敷は広いようで、これは骨が折れそうだとため息。
そんな私を見てカルト君はくすりと笑うと、私の手を静かにぎゅっと握る。
「行こう、お姉様」
それに頷き、私達は招待状を渡して中に入る。
にしても、広いなあ。
周りの子達を見れば、12歳から18歳くらいまでの男女がいる。
皆いいところの出みたいだから、普通に考えて婚約者とかそういうものだろう。
むしろ、そういう人のみを集めていると言っても過言ではない。
ここに参加できる条件が私達くらいの年齢のカップル、つまり婚約者がいるいいところの子どもだろう。
「わざわざお越しいただいてありがとうね。さあさあ、こちらへどうぞ」
そんな事を考えながら辺りを見回していると、招待してくれた奥様の方が私達に近付いて来る。
適当に話を引き出しつつ、誘導されるところへと向かう。
何となくだけど、わざわざ奥様自ら案内するところが怪しい。
ちらりと他を見れば、メイドが案内しているような子もいる。
……選別?
人身売買の。
繋いだ手に力を入れてそれを訴える。
何となく伝わったようで、カルト君が頷いてくれた。
『ごめんなさい奥様。私トイレ行きたくて』
「あらあら、それは大変ね。あっちにトイレがあるわ」
私はトイレに行きたいふりをする。
「僕も名前のこと待ってたいので、後でそちらに行ってもいいですか?メイドさんに案内してもらうので」
直ぐに意図を理解してくれたカルト君が私の話に上手いように乗っかって来る。
そして難無く奥様から離れることに成功した。
『カルト君、ここさ、怪しくない?』
トイレ方面から先回りして、奥様に案内されかけた部屋を見る。
扉は閉まっていて、今無闇に入る事は出来ない。
「さっき聞いたんだけど、近々行われる闇オークションに出品される物の中には子どもも居るらしい。その子達が丁度ここにいるくらいの年齢らしい」
カップルに限ったのはいいところの身分で、かつ沢山の人を集められるから。
なるほど、道理でじろじろと身体を舐め回されるように見られたわけだ。
『今回は情報収集が絶対優先?何かあったら殺してもいい?』
「何かあれば殺してもいいよ。もし本当に人質にしているならだけどね」
『……何をしているか分からないからとりあえず情報収集、分かり次第状況打破ってことでオーケー?』
「うん」
だからもしもの時のためにイルミも居るのか。
理解理解。
私とカルト君で軽く作戦を決める。
そして、奥様やメイドが消えて行った所へと向かった。
▽
中に入ると、12歳から15歳までの子ども達で、尚且つ色白で可愛らしい子達ばかりがいた。
「遅かったわね。どうかしたの?」
『ごめんなさい。ちょっと迷っちゃってて、このお屋敷広いから』
「あら、それはごめんなさいね。私も着いていけばよかったわね」
相変わらず人の良さそうな笑みで微笑む奥様だが、その目元がどうしても怪しい。
でも、この人からは血の臭いはしないから弱いだろう。
『それで奥様、一体今から何をするんですか?年齢の近い子ばかりになってますけど』
そう口にした途端、奥様の顔が一瞬固まった。
ああ、何か隠してる。
これは確実に黒だな、と確信。
「今からお洋服を着替えてもらうのよ。自社製品のね。それからお食事会をするの」
着替える意味は?と問えばまた少し返答に詰まる。
奥様のしどろもどろな返答を聞いて、私は少し離れて行動していたカルト君のところへと移動する。
もちろん、奥様が外へと行ったのを見届けてからだ。
「お姉様、何か聞き出せた?」
『とりあえず黒ってことくらい。……これって、私たちの名簿よね』
背の低いサイドテーブルの上にあった名簿。
パラパラと捲れば、途中から紙が分厚くなっていることが分かる。
それを剥がしてみると、間のページには人身売買の顧客リストや欲しい臓器などが全て記載されていた。
今まで売ったであろう少年少女の名前もくっきりと示されている。
『人身売買で決まりだね。ここ、名前も書いてある』
出品者の名前がここの夫婦になっていることを確認し、その名簿を閉じた。
さて、お仕事と行きますか。
カルト君と分かれて行動を取る。
私は奥様を、カルト君は旦那様を暗殺し、屋敷内のメイドも関わったいたのかを聞き出し次第殲滅する。
そしてその後、屋敷内の人質を解放するという流れだ。
私はそっと部屋から出、奥様に話があると言ってメイドに案内してもらう。
連れてこられた部屋に気配を殺して近付き、彼女の後ろを取ると念の炎で焼き殺した。
死体を一瞥すると、案内してくれたメイドに人身売買のことは知っていたか尋ねる。
もちろん背後から首に鋭く変形させた爪を当てて。
彼女がコクりと頷き、屋敷の者は皆知っていますと答えたのを最後に、殲滅を開始。
ものの数分で屋敷内全ての人を焼き尽くすと、カルト君と合流して人質を開放した。
仕事完了《よーし、お仕事終わりっ!》
〈わりと呆気なかったね〉
《まあまあ、楽な分にはいいよ。とりあえずお腹減ったから早く帰ろ》
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