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キキョウさんにお母さんの着物を着せて貰った私はシルバさんの部屋へと通される。
「ほう…。似合うな」
『へへ…。ありがとうございます!』
着物って最近着てなかったから少し動きづらいけど、昔はよく着てたからか懐かしい。
シルバさんに大きな手で撫でられ、私の頬は更に緩む。
そんな私にシルバさんは封筒を差し出した。
白い大きな封筒……?
開けてみろと促されたため、封筒を開けてみた。
『…アルバムだ』
「お前の母親から預かったんだ。自分が婚約した歳の二倍の年齢になったときに名前に渡してくれってな」
アルバムをパラパラと開いてみる。
そこにはお母さんと写る私や、小さい頃の私と私と同じくらいの男の子が一緒に写る写真が多くあった。
『シルバさん、この銀髪の男の子は?』
「それは2歳の頃のキルアだ」
『あ、言われてみれば確かに…。ふふっ、…小さいなぁー』
写真では皆笑顔だった。
たまに私とキルアの二人で泣いてるのをイルミが困った顔であやすレアショットとかもあって面白い。
「名前、墓参りに行きたいんだろう?イルミが付き添ってくれるから行ってこい。夕飯までには戻ってこいよ」
アルバムを見ていたら、シルバさんにそう声を掛けられた。
そんなに行きたそうな顔をしていただろうか?
悟られるなんて、暗殺者失格だな。
でも、些細な私の変化に気付いてくれるゾル家の人達は大好きだ。
『ありがとうございます!行ってきます!』
だから私はこの人達には心を見せてしまうし、感情を出してしまう。
暗殺者失格だって、そんな風に育てた覚えはないって。
きっと、そうお父様には叱られてしまうだろうけれど……。
どうかお母さんのいなくなった今、この人達とヒソカの前でだけは感情も漏れるただの“女の子”でいさせて下さい。
本心では、ずっと前からただの女の子になりたかった。
私もキルアみたいにただの女の子になりたいって言えたらいいんだけど。
それはきっと一生無理かな。
私にそんな勇気は……………ないもの。
「名前?浮かない顔してるけど」
『なんでもないよ、イルミ。ほら、早く行こう!』
こんな弱い私を、貴方は受け入れてくれますか?
父の教え〈お前は感情も痛みも感じない殺人人形だ。
唯一お前が感じるのは殺しの喜びだ。
弱みを作るな、味方を作るな。
お前は一人だ。
俺の命令以外には反応せず、俺に刃向かうな。
刃向かえば、俺はお前を殺す。
いいな、殺人人形〉
《(私はどうしても、人形になれないんだよ。だって私は所詮人の子供だもん)》
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