1
イルミとククルーマウンテンの裏にある花畑に向かう。
綺麗な花が咲き乱れるそこは、お母さんの墓があるところだ。
と言っても、骨などは入っていない。
お父様にお母さんの骨は残らないまでに焼かれてしまったからだ。
ここに埋められているのは、お母さんがいつも肌身離さずに持っていたネックレスと、お母さんの胸に埋められていたコードだけ。
「ああ、そういえばさ。名前が最近付けてるそのネックレス、どこかで見たことあるなと思ったら名前の母さんの付けてたものと同じデザインだ」
イルミはお母さんのネックレスとコードの埋まっているところで手を合わせた私を見届けた後、そう言ってマチから貰ったネックレスを指差した。
『そうなの?実は私、あんまりデザイン覚えてないんだよね』
「うん。それと全く同じデザインだよ。確かそれ、名前が生まれた時に名前の母さんが特注で作ったネックレスだよ」
『へぇ……。そうなんだ』
何故マチがこれを持っていたのかが分からない。
お母さんと何か関わりがあったのだろうか?
…まあ、それについてはマチ本人に確かめよう。
私はネックレスを指先で撫で、もう一度手を合わせると、イルミを連れてククルーマウンテンへと戻った。
「戻ったか」
『はい。ありがとうございました』
ゾルディック家に戻ると、珍しくシルバさんとゼノさんが出迎えてくれた。
この二人が出迎えてくれるということは、組み手でもするのだろうか?
「時に名前、これから何か予定はあるか?」
『ないですよ』
「うむ。ならちょっとワシらの相手をせえ」
…やっぱり。
イルミをチラリと見ると、仕方ないというような顔で見られた。
『分かりました』
お墓参りの許可もくれたんだし、付き合うのも悪くないなと頷く。
でもこの人達、手加減が全くないから地味に憂鬱なんだけどね。
まあ、嫌じゃないけど。
それだけ私のことかってくれてるっていうことでもあるし。
「ならば久しぶりに、ワシら対イルミと名前でやろうかの」
……お前ら組むのか。
早くも前言撤回したいよ。
私は苦笑いを浮かべて頷くと、イルミに耳打ちした。
帰りは抱っこして部屋まで運んで、と。
イルミは仕方ないな、という顔で頷いてくれた。
[ 143/153 ][*prev] [next#]
[back]
[しおりを挟む]