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「名前ってさ、暗殺者っぽくないよね。お嬢様っぽくもないけど、かと言って一般人でもない」


門を開けてミケを撫でてから本邸に向かっていると不意にイルミがそんなことを言い出す。


『どういう意味?』


よく分からなくて尋ねる。


私の何が変だと言うのだろうか。


イルミは顎に手をやり首を傾げて、いつもの考える時にする仕草をすると、静かに口を開いた。


「表情コロコロ変わるし、執事達だけじゃなく守衛とまで仲がいい。けど普通なら怖がるようなミケも好きだし、何故かミケも名前には懐いてるし名前の前では感情の出るただの犬だ」


だから名前はどれに分類しても何かしっくりこない…とイルミは言う。


私は私の好きなように生きて振る舞ってるだけなんだけど、イルミからすれば不思議だろうな。


私もお母さんがいなきゃこんな性格じゃなくイルミみたいになってたんだろう。


『私は私だから、何かに分類することが出来ないのは当たり前。まず分類すること自体がおかしいよ。だって、皆違うのに同じ枠に入れられるわけないもん』


昔お母さんが言っていた台詞。


イルミはきょとんとした顔をして数秒固まると頷きながら納得した。




 母の言葉


《(今の私の元は全て優しかったお母さんの言葉)》


〈―…ひとつ嫌いなところがあるならふたつ好きなところを見付けなさい。
絶対に誰かの愚痴を零してはなりませんよ。

全ての自然には、優しくあなたの愛情をたくさん注ぎなさい。
大切な人はもっと大切になさい。

無駄な殺生はいけません。
自分の生きる為に必要なものの命しか奪ってはいけません。

自分の無限の可能性を信じなさい。
他人と同じものさしで計ってはいけません。
あなたはあなた、他人と違って当たり前です。

それらをきちんと守りなさい。
そうすればきっとあなたは自然から、人々からあなたが与えた愛情の分だけ愛され、大切にされるでしょう―…〉


《(今は亡き母の教え。それが今の私を作っている)》
 

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