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会場に入ると、ヒソカの片腕はすでになかった。
ヒソカが右腕を持ち、カストロさんの能力を笑みを浮かべながら明かしている。
「あ、名前。遅かったな。何してたんだよ」
キルアの隣に座り、リングを見る。
少し吐き気がするけれど、ヒソカは負けないしマチが手当てしてくれると分かっているからか大丈夫そうだ。
『うん、ちょっと電話してたんだ。…それにしても、ヒソカの悪い癖だね。自分の腕を食べちゃうなんて』
自分の腕を食べるヒソカは楽しそう。
笑みを深めたヒソカに、私はそっと目を伏せた。
大切な人の血ほど見たくないんだけど、これからヒソカは自分で自分を犠牲にするから仕方なくだ。
「…大丈夫か、名前?」
そんな私の様子に気付いたのか、キルアが心配そうに声をかけてくれる。
『平気だよ。でも、少しだけ肩貸してくれないかな?直視したくないんだ』
軽く笑いながらそう返事すると、キルアが私の肩を自分のほうに引き寄せて、私の顔を自分の胸板に押し当てた。
さりげなく耳も塞いでくれる。
私の耳からは、トクントクンと鳴るキルアの心臓の音しか聞こえない。
『…ありがとう』
「……ん」
ぽんぽんと頭をあやすように撫でられ、私はようやく肩の力を抜いた。
ヒソカのこと信じてるけど、やっぱり死んじゃったらどうしようとか考えちゃうんだよ。
そんな弱い自分が私は大嫌いなんだ。
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