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おとなしく、怪我を治すことだけに集中した一ヶ月。
やっとのことで怪我が完治した。
驚くことに、なんとゴンは念なしでたったの一ヶ月経った今日、もう完治したんだとか。
そして、ついに迎えるヒソカ対カストロ戦もまた今日行われるのだ。
「いいかい、名前◆今日は安静にしてるんだよ?」
怪我も完治したというのに私は、ヒソカに試合を観戦するのを止められた。
『え、何で?私もう完璧に治ったよ?』
首を傾げてヒソカに尋ねると、ヒソカは意味深に笑う。
あ、なるほどね。
今日はヒソカが趣味の悪いパフォーマンスをする気だからか。
ヒソカの表情を見て理解した私は素直に頷いた。
だって、ヒソカは私の言うことなんか聞きやしないし、かと言ってヒソカのパフォーマンスも見たくない。
ということで、今日はヒソカ戦を観戦するのをウイングさんに止められたゴンと遊んでいよう。
『じゃあヒソカの試合が終わるまでゴンの部屋にいるね。あ、一応マチのこと呼んでおくから。じゃあ、試合頑張ってね』
チュッ、とヒソカの頬にキスをして、私はゴンの部屋に向かった。
『やっほー』
部屋にノックもせずに入る。
普通だったらそれを咎められるだろうけど、ほぼ毎日その行為を繰り返していると人間諦めが出て、何も言わなくなるのである。
「あれ、名前?どうしたの?」
「ヒソカ戦見に行くんじゃねえのかよ?」
二人の疑問は当然と言えば当然の質問だ。
誰もヒソカ本人に観戦を止められたなんて思わないもんね。
『それがさー…、ヒソカに止められたんだよね。まあ、半分は自分の意思だけど』
微妙な表情で私を見る二人に苦笑を漏らす。
「よく分かんねぇけど、名前も行こうぜ?ゴンの分のチケット余っちまって勿体ねーしさ」
『え、いやだから…』
「ほら、早く行くぞ。どーせヒソカもいざ名前が観戦してたら嬉しいだろうし。つーわけで、行ってくるな、ゴン」
ぐいぐいと腕を掴まれて部屋を出る。
ちょっと、話し聞いてたー!?
私、ヒソカにも止められてるんだってば!!
「いってらっしゃ〜い。…強引だなぁ、キルアは。素直に俺と二人きりにさせたくないって言えばいいのに」
一人残されたゴンは、不器用な友人に小さくエールを送った。
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