3

 
体中の痛みと、むせ返るような血の臭いに目を覚ました。


『お母さん……、』


ぽつりと呟く。


最初に目に入ったのは、白い天井で懐かしい夢を見ていたことを実感した。


もう何年も前になるというのに、私は母が父の手によって殺されたあの日以来、血を見ると吐き気がするし、父親と同じ灰色の目を見ると暴走してしまう。


今回戦ったビスマルクさんは、偶然にも瞳の色が父親とひどく似ていたし、あの人をただの駒としてしか見ていないような目が父親と重なって見えてしまったのだ。


何とか殺人衝動は抑えたが、あれはかなり危なかった。


ビスマルクさんを殺していたら、私は父と同じになってしまう。


それだけは嫌だった。


私は仕事以外で人を殺さないし、いくら感情が高ぶっていても私情だけで殺しはしない。


前に突き出した手の平を握り、目元を覆った。


「名前…?起きたのか?」


すると、不意に自分の足元から声が聞こえて慌てて手を退けた。


『キルア…?あれ、何で……。もしかして、ずっといた?』


こくりと頷いたキルアを見て私は苦笑いを浮かべた。


いくらあの夢を見て精神的に不安定だったからといって、こんな至近距離で気づかないなんて…。
 

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