立海のアイドル集団、もとい立海テニス部のレギュラーの内の一人、噂の詐欺師は実は噂通りではなかったらしい。
「なまえちゃん……死にそうじゃ」
『……あれ、そうには見えないんだけど』
目の前でぐってりとそう零したその姿と口調でそれがもう十二分に分かってしまう。
最初こそ自分の目を疑ったけれども、幻でもなんでもない本物の仁王くんであって、
もう今となってはこちらの姿の方が彼だと記憶してしまった。
昼休みになり、制服のポケットの中のマナーモードに設定されていた携帯が振動を伝えた。
誰からだろうと携帯を開けばメールの受信完了の文字。
送り主はあの仁王くんだった。
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死にそうじゃ
-END-
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たった一言。
そんなメールが届いて、慌ててどこにいるのかメールを返せば直ぐに「屋上」だと判明。
ひょろひょろとした彼ならどこかで倒れていてもおかしくないような気がする。
もう昼食もそこで済ませてしまおうとお弁当片手に屋上へと足早に向かったのだが、そこにいたのはとても死にそうには見えないその姿。
「…俺にしたら大変なことナリ」
『太陽に当たって死にそうだったら仁王くん何にも出来ないじゃん……』
腐っても詐欺師だと頭を過ぎったが、もともと余り太陽の日差しを好まない彼にしてみればなかなか辛かったらしい。
私が彼の横に腰を下ろせばどこからか男子中学生にしては小さめのお弁当が出てきた。
やはり彼のペテンだったかと思ったがへにゃりと笑うその笑顔に、もう考えることは止めた。
『仁王くん、野菜は?』
「……プリ」
『バランスよく食べなきゃテニス出来なくなっちゃうよ?』
ひょい、と仁王くんのお弁当を覗き込めば見事にバランスの採れていないであろうそれ。
「やぎゅーと同じこと言ってるナリ…」
『やぎゅーくんも仁王くんを心配してるんだよ』
聞けばその"やぎゅーくん"は仁王くんのことを気にかけているようで、おそらく彼も手を焼いているのだろう。
「でも嫌いなものは嫌いじゃ」
『………決めた』
「?」
『私が仁王くんのお弁当作ってくる!』
そう言えば一瞬目を見開いてびっくりしたような表情を作った。
その後には眉を下げて申し訳なさそうに口を動かす。
「……でもなまえちゃんがきついナリ」
『仁王くんの体の方が大事!』
「!」
"こちら"の仁王くんは表情豊かだ。
『その代わり、残さず食べてね』
「……玉子焼きは甘いのがいいぜよ」
そう言った仁王くんの表情は幼い雰囲気を漂わせていて思わずきらきらと光る銀色に手を伸ばして撫でた。
目を細めて気持ちよさそうにするその姿が、私が密かに気に入っているものだと彼は知らないだろう。
噂の詐欺師
「仁王、今日の弁当はバランスがとれているな。自分で作ったのか?」
「なまえちゃんの手作りナリ!」
「に、仁王くん!それは本当ですか?!」
「これからは心配せんでも大丈夫ぜよ、やぎゅー!」
「仁王、いつになくテンション高いのはそれかよぃ」
「柳、なまえちゃんって?」
「精市の隣のクラスの生徒だ。どうやら仁王の事情を知っている数少ない人物のようだな」
「仁王、今度なまえちゃん連れてきなよ」
「…………なまえちゃんはあげないぜよ!」
next⇒あとがき
DEAR 依緒璃ちゃん!
サイト一周年だということでこんなものですが贈らせて頂きだきますっ!
依緒璃ちゃんもヘタレ仁王の良さに共感してくれて嬉しいよ…っ!
私も書いてて楽しいです^^*
二周年も目指して頑張って下さい!
これからもよろしくお願いします(*^ω^*)
By莉葉
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ヘタレ仁王が可愛すぎて吐血(^q^)←
莉葉ちゃんの小説にはいつもきゅんきゅんですww
一周年祝ってくれてありがとう!
もう本当莉葉ちゃん大好きだぁーっ!
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