『っ、きゃ』
「、う゛ぉおい!」
――その出会いは偶然か、それとも必然だったのか。
イタリアの沢山のお店が集まった沢山の人で溢れる大通り。
もともと人混みを縫って歩くのが苦手な私。今日はそれに加えて両腕に野菜の入った紙袋を抱えていた。
人混みを歩くことが決して上手くはないことを自覚していたものの、偶々立ち寄った野菜を売っているお店の店主がとても気前がよく、あれよあれよと気がつけば両腕で野菜の入った紙袋を抱えなければならなくなってしまった。
『買いすぎてしまった…』
そう呟いてみても目の前の野菜達は少なくなるはずもなく、軽くなるはずもなく。
なまえは一つ息を吐き紙袋を抱え、人通りの少ない路地裏を通って家に帰ることにしたのだった。
『………あれー、』
人混みを通るのは苦手でも方向音痴ではなかったと記憶していたはずだが。
気がつけばそこは、見知らぬ場所だった。
『………』
最初こそ戸惑い、その場に佇んでいたなまえ だったが、自分の方向感覚を頼りに再び荷物を抱え直して足を進めた。
、のもつかの間。紙袋によって半分ほどの視界を遮られていたなまえは前方の存在に気づかず。
その前方にいた人物は携帯電話、もとい通信機の不調に気を取られ。
そのまま二人はぶつかってしまい、冒頭にいたったのだった。
ぶつかった衝撃でなまえの抱えていた紙袋の中の野菜が一瞬宙を舞ったのだが、そこはぶつかった相手、S・スクアーロのヴァリアークオリティーによって地面に落ちることは防がれた。
『あ、ありがとうございました……!』
「こっちこそ悪かったなぁ゛」
なまえは宙に浮いてしまった野菜を少しでも受け止めようと(意味はなかったのだが)片手を中途半端に浮かせたままの格好で目の前の人物を見上げて、お礼の言葉を述べた。
そして、しばし固まった。
目の前にいたのは、眩しいくらいの銀色の長い髪に、
すらりと高い身長、整った顔。
「うぉ゛ぉい…」
『あ、すみませんでした!まじまじと見つめてしまって。ご気分を害されてしまいましたか?』
「いやぁ、こっちこそ悪かったなぁ゛」
「それじゃあなぁ」と言ってくるりと体を反転させた彼のコートを思わずつかんだのは無意識で。
『あ、』
どこかで今の自身の現状から逃げ出したいと、
思っていたからなのかもしれない。
「なんだぁ゛…?」
『えっと……………道、教えていただけませんか?』
目の前の彼は少々、というか大分訝しげな表情を作ったが、私の表情も大分切羽詰まっていたのかいくらかの間をあけた後「……分かったぞぉ゛」と声を発した。
私はといえば、家までの帰り道の確保と無意識に掴んでしまったコートの言い訳に安堵の息を吐いた。
* * *
『何から何までありがとうございました…!』
「何かお前という人物がよく分かったぜぇ゛」
『………』
家までの帰り道、テンポよく……とはいかないものの、交わした会話のことだろうか。
ただ私の今日の行動を話しただけだというのに。
どこか遠くを見ている彼を見て何とも言えなくなった私は間違ってないと思う。
……そんなに私って変なのかな。
「じゃあ、今度こそまたなぁ゛」
『あっ、あの、お名前、何て言うんですか?』
「……次またどこかで会ったら教えてやる」
そんなセリフを残して既に夕日が傾いて薄暗くなり始めた街の建物の角に消えていった。
ほんの少しだけ自分の頬が緩むのを感じたが、それも直ぐに消え失せなまえは直ぐそばまで来ていた自身の家の扉を開けて家に入った。
その日の星空は雲一つなく、自分の心情とは正反対で思わず目を伏せた。
「……おい、カス」
「なんだぁ」
「…明日の任務の詳細だ」
ここ、ヴァリアーの本部では両目を伏せたままの頬に大きな傷を走らせたXANXASと薄暗い中にも栄える銀色を靡かせるスクアーロが向かいあっていた。
XANXASが投げてよこした資料を受け取り早速目を通すスクアーロ。
その内容はと言えば、
いわば政略結婚の阻止だという。
依頼してきたのはボンゴレの傘下にあるファミリー。そのファミリーと規模としてはあまり大きくないファミリーとの結婚なのだが。
どうやら結婚相手はボンゴレにどうにか取り入ろうとボンゴレ傘下にあるそのファミリーとの婚約を結ぶつもりらしい。
もうすでに裏は取れているのでそんな婚約を結ぶ必要もないのだが、何分その相手というのが厄介で。
とても気性が荒く、こちらとしても下手に手を打つと少なからずの被害を負うだろうとのこと。
そこで、このヴァリアーに任務として回ってきたと言うわけらしい。
そして、スクアーロの役割は
“現場の作戦隊長兼ボンゴレ傘下側の婚約者の保護”
「チッ、久々にめんどくさい任務だぜぇ」
その呟きは暗闇に溶け、一人の不安をも飲み込み、夜は更けていった。
『はぁ……』
深い息をついても現状は変わらない。
ついにこの日がやってきてしまったのだ。両親こそこんな事態をどうにかしようと動き回っていたみたいだけれど、私だって今置かれている状況くらい把握している。
今後、事態がどう動くかは全くわからないが、今ここで私が抜け出すことがファミリーにどれだけの影響を与えるかくらいは嫌でも分かる。
熱くなる目頭に手を当て、少し落ち着きを取り戻し私は歩き始めた。
―――派手に飾り付けられた式場へと。
* * *
「やぁ、なまえさん」
『えぇ』
「あまり愛想がないんだねぇ、でも現状を理解してるあたり頭はきれるのかな」
このような場所で思うには間違っていると思うが、正直平手打ちの一つでもして逃げ出したい衝動に駆られる。
この場所に足を踏み入れた時点で手遅れなのは承知だ。
――それでは誓いのキスを
それは全てを諦める時。
視界の端で焦りを見せる両親を捉え、そういえば、と両親の言葉を思い出した。
“大丈夫だから”
と。全然大丈夫なんかじゃない。
そんな心とは裏腹にその時は迫る。
私が目を閉じたのと入り口の方から爆発音がしたのはほぼ同時のことだった。
『うぉぉお゛い!!そこまでだぁ!!!』
あの時に無意識に手を伸ばした理由が分かった気がした。
『っ!!』
その声を聞いて私は走り出していた。
記憶に新しい銀色の元へと。
しかし今の格好は走ることが難しいドレス。
そしてそれを許さないと背後で銃を構える音。けれど私の足は止まることを知らない。
ただただ目の前の彼へと。
ガウン、と重々しい銃声の後に何かに弾かれた音。そして肌に感じる温もり。
「う゛ぉおい、大丈夫かぁ?」
『はい…っ』
「たく、お前は何でこんなことになってるんだぁ」
『……私にはどうにも出来ませんもん』
「まぁ、そんなことよりここから避難するかぁ……
う゛おぉおい!ベル!!後は任せたぜぇ!!」
「ししっ。あとで先輩の話し聞かなきゃな」
『ふ、きゃっ』
「しっかり掴まっとけぇ!」
私の体が浮いたのは彼の片腕に抱き上げられたからで。
ムードなんて少しもなかったけれど、あなたは私の王子様。
昨日の出会いは偶然なんかじゃなくて、必然。
確かに私はあなたに恋をしました。
あなたの名前を知るまであと数分―――。
名前も知らない王子様
「…スクアーロだぁ」
『スクアーロ、さん…』
「なまえ」
『!!』
「なんだぁ、その……。お前は運命信じるかぁ?」
『私はスクアーロさんと出会ったことが運命だと思ってます!』
「チッ」
少しだけ強引に引き寄せられた腕の中で、私は確かに“運命”を感じた。
⇒あとがき+おまけ
DEAR 依緒璃ちゃん
リクエスト頂いたスクアーロです!
何故か捧げ物は中編みたいな内容に。
最初の時点ではこんな風な内容ではなかったんですよね…。
不思議だ←
スクアーロにさらっていただきだい←
もちろん、返品受け付けます!
相互ありがとうございました(*^ω^*)
おまけ↓
「いやーん、スクちゃんお姫様さらってくるなんてロマンチックね!」
「しし、カスザメ先輩そいつ抱えて直ぐ出てったしね」
「しかも運命とかー、めっちゃくちゃ似合わないですよねー」
「カスが、責任とったらどうだ」
『え、どちら様……』
「う゛ぉお゛おい!!ふざけんなぁぁ!!」
あのままで終わらないのが彼の災難なのです。
* * *
莉葉ちゃんっ!
素敵なスクありがとです^^*
&載せるの遅くなってごめんねm(__)m
これからもよろしくね◎
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