白竜って『恋愛には興味ない。サッカーのほうが大事だ』…なんて言ってたけど、そのわりに空いてる時間があれば頻繁に会ってくれる。今日だってそう、早く終わって気が向いたから、という名目で会いに来てくれた。

「どこか行きたい場所はあるのか?」
「そうだなあ…」

とは言われたけど、行きたい場所というのが特に思い付かない。買い物?…っていう気分でもない。寒さで悴む手を擦り合わせながら首を捻って考えていると、白竜がふう…、と白い息を吐いた。

「…俺の家に来るか?」
「えっ、いいの?」
「こんな寒い中でじっとしてたら風邪を引く」
「うん…さむいね…」
「今日も事前に"行く"とメールしただろう。行きたい所くらい考えておけ」
「ごめんなさい」
「全く…、」

白竜は呆れ気味に溜め息をつき、私の手を握って歩き始めた。…あれ、普段はあまり人前で手を繋いでくれないのに。何となくだけど理由は恐らく、私が寒くて手を擦り合わせていたのを見ていたからなあ、なんて。白竜の手もちょっと冷たいけど、私に比べたら暖かい。白竜が何を思って手を繋いでくれたのかはわからないけど、私は自然と口元が緩んでいた。








先程いた場所から白竜の家は然程遠くない。白竜の家には何度か訪れたことはあるし、今日は久しぶりに来た。お言葉に甘えて家に上がらせてもらい、白竜の部屋に通された。必要なものだけしか置いていないシンプルな部屋。綺麗に整頓されてて、真面目な性格がよく表れてる。白竜は、脱いだコートをハンガーにかけて、「少し待ってろ」と暖房を点けて部屋を出ていった。暖房から出てくる風が冷えきった部屋を暖めてくれる。白竜の部屋を眺めると、所々にあるサッカー関係のものが目に入る。…本当にサッカーが好きなんだなあ。白竜のそういう面は微笑ましいんだけど、恋愛にもちょっとは素直になってくれたらいいのに、すぐ無愛想になる。でもそれが逆にわかりやすかったりして、案外…満更でもない顔してるし。まあ、白竜がにこにこ笑ってるのもどうかと思うけど…。


しばらくして、湯気の立った二つのマグカップを持って、白竜が戻ってきた。マグカップの一つを私の目の前に置いてくれ、白竜もテーブルの前に腰を下ろした。ほんのりと甘い香りが漂っているマグカップにはココアが淹れられている。私が白竜の家に訪れると、よくココアを淹れてくれる。

「ありがとう。あ、白竜も今日はココアなんだね」
「たまにはな」

いつもはお茶ぐらいしか飲まないのに、珍しい。そんなことをぼんやり思いながら両手で包み込むように熱を帯びたマグカップを持って冷えた手を暖める。

「白竜が淹れてくれるココア美味しいから好き」
「どこにでも売ってある粉だぞ」
「でも私は白竜が淹れてくれたのが好き」
「…それぐらいならいつでも淹れてやる」

白竜は少し照れたような表情をしてココアを飲み始めた。私も、ふーと息を吹きかけて暖かいココアを口にした。うん、やっぱり美味しい。へへ…いつでも淹れてもらえるんだ。そのことが嬉しくて、つい顔が緩んでしまった。

「何にやにやしてるんだ」
「白竜って優しいよね」
「は?」
「ストレートに優しいんじゃなくて、然り気無く優しいっていうか…」
「…まあ、俺がここまで気を利かしてやってるのはみょうじだけだ」
「わあ…初耳」
「当たり前だ、初めて言ったんだからな」
「あ、わかった。彼女の特権ってやつ?」
「……知らん」

つーんとした素っ気ない返事が返ってきた。私にはそれは照れ隠しにしか見えないんだけど…。あまり余計なこと言ったら怒られそうだからこの辺でやめておく。

「ね、白竜」
「…なんだ?」
「へへ、呼んでみただけ」
「そうか。……みょうじ」
「うん?」
「呼んだだけだ」
「……」

白竜は何事もなかったような素振りで、またココアを飲み始めた。私の冗談に乗ってくれるなんて思ってもみなくて少し面食らったけど、またすぐ顔に出てしまい、にやついてしまった。それに気付いた白竜がチラリと私のほうを見てきた。またつっこまれるかもなあなんて考えていたけど、その予想は違っていて。それは、普段無愛想な白竜が時々しか見せてくれない表情。ほんの一瞬だけ、スッと目を細めて微笑んできた。

「!…は…はくりゅう、」
「?」



不意打ちは反則です
(?…意味がわからん)
(か、かっこいいのが悪い!)


* * *

相互記念に柚希さまからいただきました!

ストイックなイケメン白竜が眩しいです…!
一家に一人欲しい究極ですね…!
私も白竜にココア淹れて欲しいです(>_<)

相互&素敵な白竜ありがとうございました!