(あと1分。あと1分我慢すればチャイムが鳴る)
6時限目の苦手な数学の授業中。
私は学校の時計と秒数までキッカリ合わせた自分の腕時計に睨みを効かせていた。
「じゃあ、問4を…」
「(チャイム鳴れぇぇえ!!!!)」
キーンコーン
(よし!)
私は小さくガッツポーズをした。
「チャイム鳴っちゃったから今日はここまで。だけど今日使った資料を教務室に運んでくれる、優しい生徒はいないかしら〜」
若い女の先生が言う。
もちろん、貴重な放課後を潰すなんて嫌で、何となく皆して視線が泳ぐ。
「仕方ないわね。次当たる予定だったのは確かみょうじさんだったかしら」
「げっ…」
「はい、じゃあみょうじさんと……目が合った霧野君。お願いしていい?」
「はい!」
「はーい…」
理不尽な理由でお願いされた霧野を哀れに思いつつ、何にでも一生懸命な彼を感心した。
(私と相反して、返事にやる気を感じるよ…)
「おい、みょうじ」
「あー、霧野。残念だったね先生と目が合って」
「仕方ないさ。頼まれたからには頑張るよ」
そう笑顔でいう霧野に不覚にもきゅんときてしまった。
(きっとこういうのを、イケメンっていうんだろうね!)
運ぶ間も霧野は私のことを気にしてくれた。
(重くないか、とか、階段だから気をつけろ、だとか)
アクシデントもなく無事に運び込んで、部屋から出る。
ぐっと背伸びをしたら隣で霧野も背伸びをしていて思わず笑ってしまった。
「霧野は教室帰る?」
「あぁ、鞄があるからな」
「そっか」
「そういえば、さっきみょうじって問4当たるか気にしてチャイム待ってただろ」
「えぇ!?ばれてた!?」
「あぁ」
そんなに腕時計にがっついてたかなぁ、と苦笑いすると何故か霧野に笑われた。
「みょうじって本当に見てて飽きないよな」
「こんな先生に面倒くさいこと頼まれたのに、やる気があった霧野の方が見てて飽きないって」
「はは、それはみょうじと二人っきりだか…ら………」
とんでもない口説き文句を言い放った霧野の顔を覗くと、明らかにしまった、というような顔をしていた。
「き、霧「あ、いや…その!お、おおおオレ部活に…」
真っ赤な顔をした彼はピンク色の髪を揺らしながら、走っていってしまった。
…とりあえず彼のことだし、明日の放課後は予定を空けておこうかな。
恋にも一生懸命
(神童。オレ明日の放課後、ちゃんと告白の言葉考えてにみょうじ伝える)
(!霧野……そうか。にしても、先生に指名されてよかったな霧野)
(椅子を揺らして気を引いてみたんだ)
(霧野……)
* * *
氷乃ちゃん宅で幸運にもキリ番を踏めたので蘭丸ちゃんいただきました!
さすが男前に定評のある蘭丸ちゃん・・・
楽しませてもらいました!
氷乃ちゃんありがとうございました!
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