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グラウンドに行くと何だか皆が一カ所に集まっている。

監督の指示、じゃないみたいだし。どうしたんだろ。

「みんなー!どうかしたの?」

群がるみんなを押しやると(途中で泉ちゃんに押すなってチョップされた)、そこには同い年くらいの1人の美少女。

(えっ?待って待って、天使が舞い降りた感じですかね)

ぶつぶつと思考を巡らせていると、その女の子が突然あたしの名前を呼んだ。

「実恋ちゃん!?」
「え?」
「何だよ、実恋の知り合いかよー」
「え、いやあの…」
「よーし、ここは実恋に任せて練習再開するぞー」
「オカン待ってぇぇ!違いますけどぉぉお!!バリバリ初対面なんですけどぉぉお!」
「はあ?」

なら、この美少女は一体何者!?という疑問が野球部に巻き起こり、栄口の提案で自己紹介してもらうことになった。

「花開院伽宵です。本業は陰陽師ですが、今は訳あって上京して家政婦やってます。以後良しなに」
「……陰陽師って、おもいっきり怪しいじゃねぇか!」
「胡散臭いというか…」

隣では千代ちゃんが、陰陽師なんてすごいねー!と言っている。

いや、すごいけど陰陽師がいるってことはさ。

「西浦高校に妖怪がいたりしましたか」

わりと真面目に聞くと悠が「妖怪!?」とか楽しそうに騒ぎ始めた。
(阿部には嘲笑されたけど見てないフリしよう)

「こ、ここに来る途中になら1匹倒した、ような…(ごめんな実恋ちゃん、本当は妖気すら感じへん!)」
「陰陽師すげぇ!!!!」

(まじか!西浦に妖怪とかいるのか……千代ちゃんは私が守る!!)

「つか何で実恋のこと知ってんだよ?」

たしかに!あたしみたいな平凡な奴が、なんで伽宵ちゃんのような美少女の耳に?
ま、まさか妖怪に呪われ「…いやぁ、あのですね、うち昔実恋ちゃんのチア見てファンになったんですけど、この前たまたまこの近くで見つけて張ってたら野球部のマネジってことが分かって…それでこっそり練習見てたんですけど、朝早かったのでついグラウンドの隅で寝てしまい、さっきそこのレフトくんに踏まれた、ということです」
「え、あたしのチア見たんですか…?」
「大ファンです!」

たいして有名な中学校でもなかったのに、あたしのチアを見てくれてて、ふ、ふふふふファンなんて!

がっしり手を握って、お礼を言ったら可愛い笑顔が返ってきてものすごく感動した。

(あたしが伽宵ちゃんの笑顔に惚れそうだよ…)

「それなら、伽宵ちゃんだっけ?実恋ちゃんと千代ちゃんの手伝いしてもらっていい?
今ちょっと試合前で忙しいのよ」
「喜んで!」

やはり彼女は天使らしい。

 


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