「うわぁ見てアリババ君!お魚がいっぱいいるよ!?」

「そりゃあ港だからなっ。て、あんまりはしゃぐなよアラジン?」

「おーい二人共!用事があるのはそっちじゃないぞ?」

「はーい!」


シンドバッドおじさんに呼ばれて、僕とアリババ君は大きな船が沢山着いている船着き場の方へと向かった。あっちは漁師さん達が魚を捕ってくる港、今僕達が向かっているのは、貿易船や客船なんかが着く港。今日は小さい頃商学の授業が好きだったというアリババ君に、シンドバッドおじさんがシンドリアの貿易港の様子や話なんかを色々教えてくれるらしい。勿論、アリババ君の勉強のためだとは分かっているのだけれど。こんなにも濃い潮の香りは久しぶりだったし、何よりダイエットと魔法の勉強で忙しくてしばらく外には出ていなかったから、僕は昨日から今日のお出掛けが楽しみで仕方なかった。

おじさんの隣にいるジャーファルお兄さんは、少しだけ複雑そうな顔をしている。多分、おじさんが机の上にあるお仕事を残してここに来たからだ。決して自分が仕事をしたくないからということではなく、アリババ君のためという名目で無理矢理押し切ったみたいで、ジャーファルお兄さんも仕方なくといった感じらしい。


目的の港に着くと、そこには木箱や布に包まれた荷物が山のように積まれていた。船から降ろされる荷物もあれば、船に運ばれるものもある。人々は目まぐるしく動いていながら、彼らは皆楽しそうに働いていた。

僕はそれらを、シンドバッドおじさんやアリババ君から少し離れた位置で見ていた。

暫くいろんな人と話してたみたいだけど、その中でも一際大きな声が響き渡った。


「おお、これはこれはシンドバッド王よ!!」


日焼けをしたおじいさんがシンドバッドおじさんに挨拶をしてきた。どうやらシンドバッドおじさんと古い付き合いらしいそのおじいさんは、アリババ君を自慢の船内に招待したいと言ったので、僕もアリババ君に付いて行くことにした。


「おや。」

「?、どうしたんだいおじいさん。」


僕を見て少し不思議そうな顔をしていたおじいさんは、いやあ実はなと顎髭を撫でた。


「さっき、お前さんによく似たなりをした若者に命を救われてな。もしや兄弟かと思ったんだが、はは、髪の色も目の色も全く違うなぁ!!」


僕はおじいさんの話にもしやと思った。ピィ、と、数羽のルフが鳴く。


「おじいさん!その人どんな人だった!?」


おじいさんから聞いたその人の容姿は、僕の予想通りだった。


「それって、まさか…。」


アリババ君が眉をひそめる。ジャーファルお兄さんの表情も穏やかじゃない。おじいさんは体験した奇跡の興奮が忘れられないらしく、シンドバッドおじさんにその時の様子を熱弁している。その間にもジャーファルお兄さんは厳しい表情を崩さなかったけど、シンドバッドおじさんは一言、信じられないなと言っておじいさんの話を聞いていた。



……間違いない。


あの人は、今この国にいる。



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