賑やかで活気に満ちた港も、明るく飛び交う人々の声も、別に嫌いじゃない。
寧ろ何時もと違う国の風景に、心が躍りつつもある。シンドリア港は、煌のそれとはまったく比なるものに見える。
船に乗せてくれた暑苦しいじいさんに適当に別れを告げ、そのまま街へと向かってみた。
初めて歩いたシンドリアの町は、そこにいるだけで楽しかった。
市場には見たことのない食べ物の屋台なんかも沢山あった、客を引き付けようと大声を飛ばす店主達が面白かった。
暫くそれらを眺めてから、俺は市場から少し離れた住宅街の隅に出た。居住区もまた、俺の知っているものとは随分違っていた。
どーせ暇だし、バカ殿の国をゆっくり"観光"でもしてやるかな。
目的も無しに、頭の後ろで腕を組んで歩いた。自分が何故この国に来たのか、なんて、元々あやふやな理由だった。だから別に適当に遊んで気が済んだなら、それはそれで煌に帰ってもいいかと思った。
でもそう考えると、逆に会わないと帰れないような気がしてきた。
「……。」
そっか。あいつ今、ここにいんだよな…。
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