「…君にも伝えたいことがある。」


今思い出しても胸クソ悪ぃ。
あれ以来、覚えている筈のない記憶が、鮮明に焼き付いて離れない。
自分がここで何をしているのか、何でここにいるのか、馬鹿みてえに不安になる。んで今日もまた、すっきりしない感情のままに陽が昇っては暮れていく。

最悪につまんねえ。

それもこれも、全部あのチビのせいだ。





「おや神官殿、どちらへ行かれるのですか?」

「別に。関係ねぇだろ。」


絨毯を抱えて庭先へ出れば、見慣れた覆面の男が声をかけてきた。同じようなのが何人もいるせいで、一々名前なんか覚える気はない。適当に返事を濁し、俺は絨毯に飛び乗った。
当前だが、地上から大分離れた位置を飛んでいるせいで、何時にも増して日射しが肌に刺さる。暑ぃし、鬱陶しい。

…最近、やけに俺の周りのルフが大人しい。国内で力が有り余り過ぎるのも苛々してウザいが、これはこれで気力が出ない…筈なのに、俺は何故かこうしてある場所へと向かっていた。行き先はそう、シンドリア。
バルバッドがどうとかで、何日か前まで、シンドバッドがここにいた。先に言った通り、怠くて面倒だったから絡みはしなかったが、なんとなく聞き耳は立てていた。

バカ殿によれば、どうやら"あいつ"は今シンドリアにいるらしい。

だからだ。
俺がこうして空を飛んでんのは。


…特に用事があるわけでもない。会ってどうするってことでもなければ、別に会いたいわけでもない。……じゃあなんでこんなに気になるんだか。

矛盾してる。

馬っ鹿みてぇ。




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