――気付けば手を伸ばしていた。


チビのちっせぇ手に、俺の手が重なる。


「行こう、ジュダル君!」


その笑顔に釣られるように、俺は立ち上がった。
チビが俺の手を引いて歩き出すもんだから、俺の足も自然と動いた。


……しかし、だ。


やべぇ、どうすんだよこの後。

ハッと我に帰った俺は、状況を理解した。


「っ、おいチビ!!お前どこ行くつもりだよ!?」


まあ答えなんて、粗方予想はついていた。


「シンドバッドおじさんのところさ。」


あーあやっぱりな。


「大丈夫、僕がおじさん達を説得するから!お城は広いし、部屋も余ってるはずさ!!」


そういう問題じゃねぇよ。

俺は煌帝国の神官で、堕転したマギで、シンドリアにとっては招かざる客以外の何者でもないはずだ。そんな奴を王宮に入れるはずがねぇだろ。バカかよ、チビ。


繋いだ掌がむず痒い。


(……柔らけぇな。)




あぁ、なぁんかどーでもいいや。
どうせ俺も、今夜煌帝国に帰ろうという気は起きねぇんだろうし。どうにでもなっちまえ。











王宮が近くなってきたところで、チビは急に足を止めた。
頭に巻いていたターバンを広げ、ふよふよと膝丈の高さを飛ぶそれに乗ったチビは、ごく自然な動作で繋いだままの俺の手を引いた。


「さあ、乗ってジュダル君。」


俺がチビの隣に座ると、魔法のターバンは力強く浮き上がり、緩やかな夜風が髪を揺らした。
俺達はそのまま、王宮のとある一室の窓へと飛んで行った。
その窓から室内へと足を着ければ、チビは室内にいた人物に向かって片手を上げた。


「やあ、ただいま。シンドバッドおじさん。」


驚いた表情をしたシンドバッドと目が合う。

小さくて柔らかいチビの掌は、まだしっかりと俺の手を握っていた。



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