3.貴方からの
あなたからの連絡がとても待ち遠しくて
早く朝が来ればいいのにって願ってしまう
リリリリリリリ・・・・
ダイヤル式の電話の高い音が朝早くから部屋に響き渡る。
ちょうど出来上がったスクランブルエッグを皿に移そうとしていた手を止め、私は急いで電話の元へと駆け寄る。
到着し、鳴り続ける電話を見て軽く苦笑してしまうのはいつもの癖。
一度深呼吸してからゆっくりと受話器へと手を伸ばす。
「もしもし?」
「あー マイ か?はよ」
聞こえてきた声は想像していた通り、彼からのもの
私は思わず笑いそうになってしまう自分を叱咤しつつ口を開く。
「なーにが「 はよ 」よっ!
こんな朝早くから電話してくるなんて非常識だと思わない?」
私のその言葉に彼、ジャン・ハボックは「 しかたねぇだろ? 」と返してくる。
「今日は今から仕事で、夜まで帰れそうにねぇんだよ。
お前夜は寝てんだろ?」
「真っ当な仕事がある人は、普通夜中の2時には寝てるわよ。」
私はジャンの言葉に、少々不服そうにそう返した。
すると返ってくるのは妙に彼に似合う苦笑。
「 そりゃそうだ! 」と言いつつ苦笑している彼の姿が、こうして電話越しでも目に浮かんでくる。
しかし、実際に彼のその姿を最後に見たのはいつだった?
私が電話のすぐ横の壁にかかっているカレンダーに目を向けそんな事を考えていると、ジャンの言葉が耳に届く。
「じゃあ、俺そろそろ行くわ。
悪かったな、こんな朝っぱらから」
苦笑混じりのジャンの声。
彼のその言葉に、私は気付いたら口を開いていた。
「・・・ねぇ、今度いつ会える?」
「は?」
私の突然の言葉に、なんとも間抜けな声が返ってくる。
まぁ、それも当然か・・・
ジャンが電話を切ろうとして、私がそれを引き止めるように口を開く事なんて始めてだから・・・
ジャンの仕事の事を理解しているからこそ、彼の負担になりたくないと思って連絡も彼からが当たり前になっていた。
でも・・・・
「・・・会いたい」
たまには甘えてみてもいいじゃない・・・・
私のその言葉から数秒後、ジャンは心底驚いたというような感じで呟く。
「・・・・・・なんか今日はえらい素直だな」
それは何?
いつもは素直じゃないって言いたいの?
私は少し怒ったような声で答える。
「何よ、たまにはいいじゃない。
それとも何?ジャンは私に会いたくないって言うの?」
軽い感じで聞いたみたけど、実は凄くドキドキしてる。
その証拠に、返答までの数秒がとても長く感じた。
そして、私の耳に彼の声が届く。
「・・・・んなわけねぇーだろ。
ヤッベェーほど、今すぐ会いたい」
ジャンのその言葉に、私は自分でも自覚できるほどの笑顔を浮かべていた。
嬉しさから笑いが込み上げ、暫く二人で笑い合う。
あぁ、私にこんな気持ちをくれるのはジャンだけだよ・・・
「なぁ、 マイ ・・・・明後日は俺昼から非番だから、一緒にどっか行くか。
マイ には仕事休んでもらわなきゃなんねぇ〜けど」
ジャンのその言葉に、私は笑顔を浮かべつつ電話台の上に置いていたペンを手に取った。
そしてカレンダーの日付にしっかりと丸印をつけつつ「 うん 」と返事をする。
店主はどうにかして説得しよう・・・
そう頭の中で結論付け、チラッと時計に目を移し時間を確認する。
そろそろタイムオーバーだ・・・
私は少し苦笑混じりに口を開く。
「じゃあ、・・・・・行ってらっしゃい」
「・・・行ってきます」
その言葉を最後に受話器を元に戻し、改めて新しく丸印のついたカレンダーに目を向ける。
自然と笑みが浮かんでくるのを止められない。
しかし頭の隅にふと浮かんできた既に冷めているであろうスクランブルエッグの存在を思い出し、未だ持ったままだったペンを乱雑に台に戻してキッチンへと急ぐ。
あぁきっと明日もまた、私はあなたからの電話を待ち続ける。
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