2.貴方よりも


あなたよりも、きっと私の愛する気持ちは強いのね


だって、離れていてこんなにも辛いんだもの


私よりも、きっとあなたの愛する気持ちは弱いのね


だって、同じ状況なのに平気そうな顔をしているんだもの






・・・・・「よりも」って、・・・・・・こんなにも寂しい詞だったのね・・・


















初めて出会ったのは、今日みたいな雨の日


私は赤い傘をさして、ぼぉっと空を見上げていた。


仕事場で嫌なことがあった、確かそんな理由だったと思うんだけど・・・


そんな私の赤い傘が目立ったのか・・・・


それともただ単に女だったからか、あなたは私に声をかけてきた。






それが切っ掛けで、私の仕事場である花屋にあなたはよく現れるようになった。


そして毎回「君のオススメで」と言って、私が包んだ花束を買っていく。


いつ頃からだっただろうか?


その花束の行き先が気になり始めたのは・・・


今思えば、全てあなたの予想通りだったのかもしれない・・・・


だって、気付いたら私はあなたの事を好きになっていたのだから






告白されて、付き合い始めて・・・・


初めの頃はよく休みの日にデートもしてた。


でも段々とあなたは仕事が忙しくなって・・・・・







最後に会ったのはいつだっただろうか?


あの時貰った花はとっくの昔に枯れてしまった・・・


昼間、職場で生き生きとした花たちに囲まれているのが少しずつ辛くなってきた。


前はあんなに心を癒してくれていたのにね・・・


私の部屋には今でも枯れた花が花瓶にさされたまま・・・・


捨てればいいのに、捨てれない私はそうとう未練がましい女なのね





(会いたい・・・・・・・・)




そう思ってしまったら、もう自分を止めることができなかった。


急に仕事を休ませてもらって、私はあなたの元に向かった。


少しでいい・・・


ほんの数分だけでもいい・・・・


あなたに会いたかったから・・・・・


きっと、あなたも私に会いたいと思ってくれてると思ったから・・・・






でも・・・





私の視線に移ったのは、最後に会った時と変わらないあなたの笑顔。


それは、私以外の女に向けられたもの・・・



あぁ、もう嫌だ・・・・・





その場でバッと元来た道を走り出した。









あなたよりも私の気持ちは強いんだわ


だってこんなにも辛いんだもの


私よりもあなたの気持ちは弱いんだわ


だって変わらず平気そうな顔をしているんだから






まるで一方通行みたい・・・・・


いや、私だけが本気だっただけで、元々一方通行だったのかもしれない・・・







家まで止まらずに走って帰ると、一番に部屋に飾ってある枯れた花を乱暴に捨ててやった。


しかしあまりにも乱暴だったため、そこら中に枯れた花びらや葉が舞い落ちる。


私はその場に崩れるように座り込むと、落ちた花びらを掴んでゴミ箱へと叩き捨てた。


手の中でクシャッとした感触・・・・・


あぁ、まるで今の私の心みたい・・・・・


片手で溢れてくる涙を拭いながら、もう片手で次々と落ちた花びらや葉をゴミ箱へ捨てていく。






もういい・・・


全部終わりにする・・・・


初めから何もなかったと思えばいいじゃない・・・・・





いくらそう思い込もうとしても涙は全然止まらない。


自分で思っていたよりも、私はロイの事が・・・






「ふっ・・・うぅっ・・・」



とうとう嗚咽混じりの涙が溢れ初めた・・・


捨てていた手を止めて、両手で顔を覆う。





どれくらいそうしていたのだろうか?


気付けば涙は止まり、明るかった空は薄暗くなって家々の窓からは電気の光が零れ落ちていた。


暗くなった部屋でぼぉっとその光景を見ていると、聞きなれた来客を知らせるベルの音が響いた・・・





出たくない・・・・




私はそう思い、座り込んだまま動かなかった。


暫くするとまたベルの音が・・・・


それでも動かない・・・・





誰だか知らないけど、お願いだから早く帰って・・・・


今は誰にも会いたくないのよ・・・




そう心の中で呟いて両手で顔を覆う。


すると、今度はそれから暫くしてもベルの音はしなくなった。


諦めて帰ったのだろう・・・・


部屋には電気もついていないのだし・・・・


しかしそこでハッとした












・・・・・・・・・・・私、鍵をどうした?









パチッ・・・・







そんな小さな音と共に部屋に突然明かりがついた。


暗闇になれた私の目にはその光は眩し過ぎて、思わず顔を逸らす。


それと同時に、「 あぁ、鍵は閉めてなかったっけ・・・・ 」と脳が先ほどの疑問の答えを出す・・・・


私は光に慣れた目で、ゆっくりと電気のスイッチがある扉の方を振り返った。










「・・・・・・・・・・・ロイ」



私の呟きに、ロイが苦笑混じりに返す。




「いないのかと思ったよ。勝手に入ってきてすまなかったね」



そう言いつつもロイは私の目の前までやって来て、スッと右手を私の前へと差し出した。


その手には、大量の花・・・・・


私が1番好きな白いバラ・・・・






「なっ・・・どうして?」




ロイの真意が読み取れなくて、私は差し出された花を受取らずに代わりにそう口を開く。






「溜まっていた仕事を全て片付けてきた。寂しい思いをさせてしまったかな?」




「っ!・・・・そんな事、今更。もう関係ないわ」




視線を逸らしながら答える。


全て分かっているんじゃないかと感じるその目を見ていたくなかったから・・・


私は、ロイの本当の気持ちなんて分からないのに・・・・






思わず顔を俯けた。


すると、そんな私の耳にロイの困ったような声が届く。






「それは残念だな。私は マイ に会えなくて辛かったんだがね」





「えっ?」




反射的に顔を上げた私の目に映ったのは、ロイの悲しそうな笑顔。


どうして・・・・そんな顔をするの?


だって、あなたは・・・・・


私が何も言えずにいると、ロイが一瞬目を伏せた後真っ直ぐ私の目を見て口を開く。






「・・・これから言う事は私の我が儘だ。

もちろん聞き流してくれてもいいし、嘲笑してくれたって構わない。

しかし、それが君の本心ならね・・・・・・・・・・ マイ 、一緒に暮らさないか?」




「っ?!」



ロイの言葉に体が揺れた。






「離れていてこれだけ辛い思いをしたのは君が始めてだ。

私は自分で思っていたよりも、 マイ 、君を愛していたらしい」




「・・・・・」



言葉が出てこない・・・・


でも、胸がある気持ちで満たされ始めているのは分かった。


あぁ、私は・・・・きっと・・・・・・・





私はそっとロイの持っている花束に手を伸ばして受取りつつ答える。





「私も・・・・私も自分が思っていたよりもずっと・・・・ロイ、あなたの事を愛していたみたい」



そう言って微かに笑みを浮かべた。


愛の強さとか、そんな目に見えないものに縛られてしまうくらい私は・・・・


思い返せば、いつも目に見える愛情があったのに・・・・





私の笑みに釣られるように微笑んで、ロイが口を開く。






「じゃあ、先ほどの返事は?」



「もちろん・・・・・Yesよ」





唇に暖かな温もりが降ってきた。













ねぇ、ロイ・・・・知ってる?


白いバラの花言葉・・・・


そう問えばきっとあなたは笑顔で「もちろん」と答えるだろう。


ほんと、こういう知識は無駄にある人なんだから・・・・










白いバラの花言葉・・・・・・




それは『 相思相愛 』


互いが互いを愛していること






















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