5.独り占めしたい


「こんなもんか?」




「うわーさすがエド!立派だよ立派!!!」





エドが練成した家は、私達が前日相談して決めた外観そのままだった。


いや、相談と言うか私が一人力説していたかもしれないけど・・・


でもそれは仕方がないと思う!


やっぱりこういう素敵な家って憧れるじゃない!!!



家の周りを一周して、思わず感嘆の溜息・・・


そんな私の様子にエドは小さく苦笑していた。


しかし目が合うと、次の瞬間には同時に笑いを漏らしてしまう。


そして嬉々とした状態のまま家の中へと足を進めた。






何も無い部屋を一通り見て回る。


遮るものがないせいか、とても広く感じてしまう。




「家具とかは徐々に揃えていけばいいだろ?」




「うん!必要なものはとりあえずあるしね〜」



「つっても必要最低限のものばっかだけどな」






それは仕方がない。


旅をするのには荷物は極力少ない方が良かった。


それに不便を感じた事は無いけれど、やっぱり今からはそういうわけにもいかないんだろうなぁ・・・






旅を終えて、リゼンブールに住む事になった私達。


リオは東部に残ると言うし、アルはセントラルで国家錬金術師の資格を取るために勉強中。


資格を取っても当分はセントラルで研究したいとか言うしなぁ・・・


結局二人で戻って来て、今日からはこの家で暮らすことになる。


私は改めてその事を実感して、部屋の中へと目を向ける。







素敵な毎日を送れればいいな・・・


料理は気合入れて作るつもりだし、お菓子作りも楽しみだったりする。


ピナコばっちゃんの所みたいに、コルクボードに写真とか飾れていければいいとかコッソリ思ってたりもするし、エドの言うとおり家具を揃えていくのも楽しいかもしれない。


とりあえずベッドとテーブルは後でエドに練成してもらおう。


きっと本棚はいくつかいるだろうし、これからはクローゼットとか必要なんだよね。




色々思案しながら部屋を見渡して、しかし始めにも感じた想いをエドを振り返りつつ口にする。






「でも二人で暮らすには広いよね〜」




苦笑交じりに私の言葉に、エドが少し口篭ってから答える。




「・・・・いいんじゃねーか?

・・・・・ずっと二人かどうかわかんねーしさ」




「えっ?」





エドの言葉の意味が理解出来ずに思わず首を傾げる。


すると微かに顔を赤く染めて、それでも私の目を真っ直ぐ見てエドが口を開く。






「・・・増えるかもしんねーだろ?」





増える?


・・・・あぁ、そっか!





「アルも一緒に暮らすかな?」




「・・・・・・・・何でそうなるんだよ」





私の言葉に、途端にガクッとエドが肩を落とした。






「えっ、何?」




「あのな〜・・・・・」




「ん?」




「だから・・・」







エドはそこで言葉を切ると、グッと私を引き寄せた。






「エッエド?」





突然の行動に驚いて声を上げてしまう。


しかしエドは間近で私と視線を合わすと、囁くように口を開く。






「新しく家族が増えるかもしんねーだろ?」




「えっ?

・・・・・・・・・・えぇっ?!」






さすがにエドの言葉の指し示す意味が理解できた。


いや、でも、だからと言って安易に頷ける内容ではとてもじゃないがない。


今になって腰に回ったエドの腕を意識してしまう。


そんな内心焦っている私の様子に、エドが不服そうに眉を寄せた。






「何だよ?

・・・・俺とじゃ考えられねーか?」




「かっ考えられないって言うか・・・・」





うっ上手く言葉が出てこない。


考えられないというか考えた事がなかった。


今はもう何て言うか、二人でいれるだけで十分幸せでそれ以上を望んでいなかったと言うか・・・


うぅぅ、やっぱり上手く自分の気持ちを口に出せそうにない。


そんな間も、エドはジッと私を覗き込んで来ている。






「・・・・・」




「えっえ〜っと、あのね、その・・・・」





何とか答えようとすればするほど、焦って頭の中が真っ白になってくる。


変わりに顔が熱くなり、耳まで赤くなっていると思う。


そんな私の様子を数秒見たエドは・・・






「まぁ、当分は今のままで十分だな」





その呟きと同時に、隙間を埋めるようにギュッと抱きしめられた。


近付き過ぎて顔が見えなくなってしまったけれど、どうやら機嫌は良くなったようだ。


焦っていた分わけが分からない。


それでも、エドの背へと腕を回している私はどうやら相当エドの事が好きみたいだ。








今はまだ、この愛しい存在には自分だけを見てほしい・・・なんて



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