2.聴かせてみたい


「そう言えば大佐はいないんですか?」



東方司令部に来て約1時間。


東部の皆との談笑が一段楽したところで、来たときから感じていた疑問を口にした。


答えてくれたのはタバコに火をつけようとしていたハボック少尉。




「大佐なら今仮眠室だぞ?

一昨日から缶詰状態だったからな〜」




「えーーーそうなんですか?

残念だねぇ、リオ」




「うちがそれに同意すると思うか?」




白けた視線と短い問い。


答えはもうその態度だけでいいんじゃないかとさえ思えた。


そして私はそんなリオの様子に苦笑を浮かべる。




「・・・・・ですよねー。

じゃあエドに頼まれたこの書類はリザさんに預けておくとして・・・・

どうする?帰る?」




しかし再び問えば、リオの視線は予想に反して宙へと向かう。


てっきり大佐が起きてくる前に帰ると即答すると思っていたのに・・・


そんな私の驚きに気付いているのかいないのか、リオはニィッと口端を上げた。




「まぁ折角来たんだから無能の間抜けな寝顔見るのも悪くないかもなぁ」




「・・・・・リオさん、あなた今凄く悪い顔してますよ?」




「気のせいだろ!

さぁ、行くぞマイ!!!」




「・・・・・・・おー」






とりあえず返事だけは力無くしておいた・・・



















書類をリザさんに預けて、ハボック少尉に教えてもらった仮眠室のドアを静かに開ける。


2人して覗き込んで、一つのベッドがうまっている事に同時に気付いた。


そして他に人がいないのを確認してそっとそのベッドにまで近づく。






「うわぁ、本当に寝てる。

熟睡って感じ?

相当疲れてるんだね〜」





「うちらが部屋入っても起きねーからなーー。

相当仕事溜め込んでたんだろ。

自業自得」




「・・・リオさん、本当にあなたは大佐相手だと容赦ないですね、って何やってるの?」




「ん?まぁ、見てろって・・・」






そう言ってニヤニヤと笑うリオの手には、いつの間に取り出したのかリオ愛用の携帯。


写真でも撮るのかと見ていると、リオは携帯で何か操作し始めた。


そしてそれが終わると、大佐の耳元に携帯を近づける。


すると少しの間を置いて流れ出したメロディー





(っ!?・・・・・・こっこれは)





覚えのあるそのメロディーに思わず顔が引き攣る。


そして・・・






『 Party シャンパンのRain セクシィなLady Kissでエスコート 』






「ちょっ!リオさん?!」




思わずリオの腕を掴んで揺する。


なんで大佐とリザさんの名曲、『 雨の日はノー・サンキュー 』を流してるの?!


疑問が伝わったのか、至極楽しそうな笑みを浮かべたリオが大佐に視線を向けたまま答える。






「いやー、うち1回でいいから無能にこの迷曲、もとい名曲を聴かせてやりたかったんだよなぁ。

おーマイ見ろ!眉間に皺寄ってるぞ!」




「・・・・・リオさん、本当にあなたは大佐相手だと全く容赦ないですね」




「気のせいだろ!」







それが気のせいではないと証明されたのは、数分間うなされ続けた大佐がリオの爆笑で目覚めたときだった・・・



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