来年もよろしくね、って


「あ〜やっぱり仕事なんだ?」






今日の予定を聞けば、電話の向こうから届いてきた「仕事」という答え。


しかし残念感を込める私とは違って、我が親友は気にした風もなく言葉を続ける。







「おぅ、そりゃー年末だし?

騒ぐ馬鹿が多けりゃ軍もそれに備えるっての」



「残念だね〜。

大佐と二人っきりで過ごせなくて」



「あっ、わりぃ!

今雑音入った、何 だ っ て ?」



「・・・・・・いえ、何でもないですよ、はい」








明らかにもう一度同じ事を言ったら電話を切られていたに違いない。


別に今更恥かしがらなくてもいいのに・・・


いや、リオの場合本気で嫌がっているのだろう。


リオの愛情はどうも斜めと言うか、曲がりくねっている。



『好き』と言ってほしいと言えば『くたばれ』とか言っちゃうような人だ。



でも大佐も大佐だとエドは言う。


絶対に言ってはくれない、それこそ怒らせるだけだと分かっていながらリオにそんな事を言うなんてどういう神経してんだ?と・・・


確かにリオに甘い言葉を期待するのは間違っている。


それでも求めてしまうってやつなのか、それとも嫌そうな顔をするリオの反応を楽しんでいるのかは謎だ。



でもきっと傍から見るよりあの二人の繋がりは深いんだろう。


何だかんだで別れないのが何よりの証拠。


そもそもあのリオが好きでもない人間と付き合う何て面倒なことするはずがない。


うまくいっているんだろう、きっと・・・







「そういうお前は?」



「えっ?」



「エドと二人っきりで年越しか?」







思考の最中に聞こえてきた問いに一瞬反応が遅れた。


しかし続けて投げられた補足付の問いに笑みを浮べて答える。






「うん、夕飯はアルやウィンリィ達と食べるけど今日は泊まらずに家に帰ろうってエドが・・・」



「ほ〜〜〜新居で二人っきりの年越しか・・・・・

・・・ボディーガードにデン貸してもらえよ、デン」



「・・・リオさん、声がマジなんですけど」



「いや、うち的には大真面目。

まぁ、お前は好きで喰われんだもんな。

必要ないか」




「あれ?

何これ地味にさっきの仕返しをされてるのかな?」



「ハハハ、気のせいだろ。

・・・まぁあれだ、初日の出ぐらいはちゃんと見せてもらえ?」



「リオもね?」



「どうだろな。

あいつの書類の束が消えない限り何とも・・・・」








溜息混じりのリオの言葉。


ちょうど切れた会話に時計へと目を向ければ、そろそろお互いタイムアップだ。







「じゃー、そろそろ私ロックベル家に向かうね」



「おーうちもそろそろ書類の回収に行かねーとな」






たぶんこれが今年最後の電話だ。


一緒に年越しをしてた頃が少し懐かしいな。


それでも今の生活にお互い充実感を持っているのは本当で・・・







「来年もよろしくね」



「来年もよろしくな」







ほぼ同時にお互い発した言葉に、思わず二人揃って笑ってしまった・・・



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