熱く挑発して


「はぁ?クリスマス?」






目の前の人物から出てきたイベント名に、思わず聞き間違いかと目を向ける。


しかしどうやら聞き間違いではなかったらしく、訂正されるどころか笑顔のまま頷かれた。







「君の元居た世界では、今日はクリスマスという日なのだろう?」




「あ?

あ〜〜〜そうだな、そうだけど・・・

・・・・・それが何だ?」







朝見た携帯の日付を思い出す。


確かに今日は12月25日、クリスマスだ。


しかしハガレン世界ではクリスマスというイベント無いらしく、町の様子はいつも通り。


元の世界では11月の末頃から徐々に見せ始めるクリスマスの雰囲気は全く無い。


クリスマスツリーもイルミネーションも、サンタのじいさんの姿も無い。


まぁクリスマス自体がないのだから当たり前だ。



おかしいのは、無いはずのものを知っているこいつだ。



まーどうせマイからでも聞いたんだろうが・・・






「一緒に祝わないか?」




「・・・・・・・・はぁ?」




「いや、マイも鋼のと二人で祝うそうだし・・・

たまには私の家で一緒に食事でもしないかね?」




「断る」




「っ!!!

なっなぜだね?」






ショックを受けた様子を冷めた目で見返す。


うちとしてはなぜだと問われる方が不思議だ。


しかしこいつにはハッキリと言わないとダメだという事は今までの付き合い上知っている。


だからうちは腰に両手をあててハッキリと、そう、ハッキリと言ってやる。






「あのな、まずイベントに乗じて誘ってくるのがウザイ。

しかもこの世界に無いイベントまで利用するところがまた小賢しい。

マイに何て言われたか知んねーけどな、クリスマスって別にどーーーしても祝わねぇといけねー日じゃねーから!

むしろ宗教関係だから、その宗教に属してねーならただの平日だっつーの!

それをここぞとばかりに利用しようなんて根が腐ってるぞ」




「・・・・・君は、もう少し何と言うか」




「あっ、うちに可愛げを求めるなよ?

そもそもうちはマイと違ってイベント事重視してねーんだよ」






マイと一緒に居る頃はバレンタインやらハロウィンやらイベントがある毎に何かしていた気がする。


しかしそれはマイが発端で、自ら切り出したことは無いと思う。


そもそもうちは、イベントがある事に何かやるほどまめな人間ではない。


これがまだマイがいるなら話は別なのだが・・・



今はマイと別行動をしているわけだし、この世界に無いイベントをわざわざ一人騒ぎ立て周りを巻き込む気にはならない。


だが、しかし・・・・・









「・・・まぁ、上手い飯なら一緒に食いに行ってやってもいーぞ?」






「っ!」









うちの言葉に、辛気臭ぇオーラを出しつつ俯けていた顔がバッと上がった。


打ちひしがれていたくせに、なんつー復活の早さだ・・・


しかしまぁ、それもまた今までの付き合い上慣れていた。


だからうちは口端に笑みを浮べると、少し顔を近づけて言ってやる。









「・・・・・その後の予定は、お前の努力次第だな」









うちの言葉に驚いたように目を見開いたのがよく見えた。


普段すかした顔ばかりしているこいつのこういう顔を見るのは好きだ。



驚いたり、焦ったり、打ちひしがれたり・・・



そういう、うちの前でしか見せねぇ顔を無性に見たくなる時がある。


特に、うちの言動によって変化するところが、な・・・




それが見れてどこか満足し、うちは縮めていた距離を元に戻した。


しかし口端に笑みを浮べたまま、さらに挑発するように言葉を続ける。









「うちをその気にさせれたら、家に行ってやるよ。

・・・・・火をつけるのは十八番なんだろ?焔の錬金術師」






「・・・最善を尽くそう」








返された言葉と、受けて立つといった色を含んだ強い瞳。


くさい台詞とか、イベントにかこつけたプレゼントとかうちはいらねーんだよ。


そういう素のお前を見るのが、気に入ってるんだから・・・



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