甘く囁いて・・・


「Merry Christmas!」






勢い良くドアを開けてそう言えば、エドの呆れたような顔がこちらへと向けられた。


その目は「・・・またか」と分かりやすく表している。


確かに何かイベントがあるたびに無理やり付き合せているような、いないような、いるような・・・



まぁ細かい事は気にしない方向で行きましょう!



勝手にそう結論付けてニコニコと笑みを浮べる私に、エドは諦めたように溜息を吐いた。


そして読んでいた本を閉じると、私へと向き直る。






「今度は何だ?

・・・つーか、まずその格好は何だ?」




「サンタクロース!サンタさん!!!」







赤を基調とした服装。


帽子に白い袋。


髭は無いしスカートだけど、気分は立派なサンタクロース!



しかしサンタクロースと言っても訳が分からないというふうに首を傾げるエドに、私は掻い摘んで説明する。







「私の元いた世界ではね〜、今日はクリスマスっていう日なの。

クリスマスツリーっていってモミの木を綺麗に飾りつけたり、街路樹をイルミネーションでライトアップしたり・・・

子供にはサンタクロースっていうおじいさんが夜にプレゼントを持って来てくれるっていう話もあるんだよ?」




「へぇ、けっこーすげぇイベントなんだな・・・」



「うん!

この季節になるとクリスマス一色って感じなの!

で〜〜〜、はい!

エドにマイサンタからプレゼント!!!」







私は持っていた袋を机の上に下ろして、その中から笑顔でプレゼントを取り出す。






「マイちゃん特性アップルパイ!!!

愛情いっぱい入ってる力作!」




「・・・・・サンキュ」






エドは一瞬驚いたように目を見開いて、次にどこか困ったような表情でプレゼントを受け取った。


そんな表情をされるとはさすがに思っていなくて、私は急に不安になって眉根を寄せる。






「あれっ?!

アップルパイ嫌い・・・じゃないよね?

もっと別の物の方が良かった?

時間かかってもいいなら今から用意するけど」




「あーーー違うって!」






私の言葉に、エドは慌てて否定する。


でも何が違うのか分からない。


不安は消えなくて、探るようにエドへと視線を向ける。



すると、何故かバツが悪そうに軽く顔を逸らされた。


そして・・・







「あーー・・・だってよ、毎回マイから貰ってばっかだろ?

事前に知らせといてくれりゃー俺だって何か用意すんのによ・・・」






少し不貞腐れたような表情で言われた言葉。


思いもしなかったその言葉に、驚いて数秒固まる。


そんな風にエドが思っていたなんて・・・


しかしすぐに笑みを浮べてエドへと口を開く。







「そんなの、気にしなくてもいいのに〜

私が好きであげてるだけなんだよ?」




「俺は気にすんだよ」




「ん〜〜〜〜〜、なら・・・」







そこで言葉を切って、エドへゆっくりと近付く。


そしてニッコリと笑顔を浮かべて、その目を真っ直ぐ見つめて言葉を続けた。











「あたためて?」






「・・・は?」





「この格好、けっこー寒いんだよね。

だから、エドがあたためて?」









後半は囁くように言えば、一瞬の間を置いてエドの手が腰へと周りグッと引き寄せられた。


間近で合うようになった視線。


その距離でエドが確かめるように問いかけてくる。









「・・・・・そういう意味で取るぞ?」





「そういう意味って?」





「・・・・・・・・・・・・・」









とぼければ、途端に不服そうに顔を顰められた。


思わずそんなエドの様子に笑い出す。







「アハハ、冗談だよ

・・・・・・・・・・・・そういう意味で取って」







後半はやっぱり囁くように・・・


そして甘えるようにエドの首へと手を回す。







「クリスマスはね、恋人同士で過ごす人が多いんだよ?」







そう言い終わると、私からソッと口付けた。


触れるだけのものを2度、3度・・・


するとすぐに足りないと言わんばかりに後頭部へと手を回された。


そこからはいつも通りに主導権をエドに握られて・・・


混じる吐息は確かに熱を帯びていた・・・



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