愛し的、猫がいる生活?


「きゃーーー可愛い!!!」









マイの叫び声が執務室内に響き渡る。


そんなマイの前には、仏頂面をしたエド。


ただし・・・・








「にゃーーー」







猫耳と尻尾が生え、手のひらサイズの・・・・・



















「どういう事だよ大佐!!!」







マイの叫び声の次に響いたのはエドの怒声。


指で示す先には、マイが大佐の手から取上げ可愛い可愛いと連呼している猫耳エド・・・


怒りからか羞恥からなのかは謎だが、とにかくエドの顔は赤く染まっている。


そんなエドの様子に、奴は笑みを浮べた。








「面白いものが見れるから来たまえと言っただろう?」





「あれのどこが面白いもんなんだよ!!!」





「あら〜、面白いでしょ〜?」









大佐とエドの会話に混ざるように発せられた第3者の声。


反射的に振り向くと、白衣を着たまだ若い女の人が執務室へ入ってくるところだった。


大佐は席から立ち上がると、その女の人の隣まで行きうちらへと向き直る。






「紹介しよう。

ブラント博士だ。」






「始めまして。

デリア・ブラントよ。

生物の研究をしているの。

ちなみに、その子を作ったのは私」






「はぁっ?!」










驚きの声を上げるエドの横では、マイが憧れの視線を博士へと向けていた。


そりゃもー、瞳はキラッキラッと輝いているような気さえしてくる・・・


うちは神の御業だとコーネロを見ていたリオールの奴等を思い出して溜め息をついた。


そんなうちらの反応に大佐は苦笑しつつ、博士の紹介を続ける。







「彼女は今、軍の情報調査に役立つ生物の研究をしている」





「本当はね〜、動物に人の知能を持たせる研究をしてたんだけど、何がどうなったのか見た目が人に変わっちゃうようになっちゃったのよね〜。

まぁようは失敗作」





「んなっ?!」





「中央に報告に行った帰りなんだけどね〜、そう言えば昔『猫耳は男のロマンだ』とか言ってた馬鹿がいたな〜って思い出して、せっかくだから見せに来てあげたわけ」







笑みを絶やさずに言う博士に、大佐は若干顔を引き攣らせながら口を開く。







「・・・・相変わらず辛辣な物言いだな」




「あら〜気のせいでしょ?」







明らかに気のせいではない。


が、それを口にするにはどうにも勇気がいる空気が漂っていた・・・


そんな中エドは疲れた表情で溜息をつく。


そして改めた様子で疑問を口にした。








「で、何であいつは俺の格好をしてるんだよ・・・」








エドの指し示す先には、マイに頭を撫でられ満更では無さそうな顔をしているエド猫。


博士もそちらへ一度視線を向け、掴み所の無い笑顔を浮かべる。







「それはこの人が用意した髪があなたのだったんでしょうね〜」





「髪?」




「そう、あの子を作るには髪が必要なの。」





「あっ!まさかさっきのか?!」







エドが何かを思い出したように大佐へと視線を向ける。


そう言えば、ここに来てすぐに奴は面白いものを持って来ようと部屋から出て行った。


だがその行きがけに、エドの肩にゴミがついてるとか何とか言って払ったのだ。


うちもエドもそのいつもなら絶対にしないであろう行動に鳥肌を立てたのでよく覚えている。


うちは一気に顔を顰めた。







「やっぱり裏があったんだな・・・これだからお前は信用出来ね〜んだよ」







うちが嫌そうに呟くと、奴は取り繕うように引き攣った笑みを浮べる。







「しかし面白いものは見れただろう?」





「黙ってやるところが好かん」




「言ったら鋼のが素直に髪を渡すと思うかね?」





「思わねーけど、やっぱり好かん。

とりあえず1ヶ月はうちとマイの半径1m以内に近付くな」








うちがそうビシッと言うと、奴はガクッと項垂れた。


そしてそんな大佐の様子を気にした様子も無く、マイは博士へと話しかける。








「じゃあこの子って、私達がここに来てから作られたんですか?」




「そうよ〜。

道具と材料さえ揃ってれば意外と早く作れるんだから〜。

ちなみに後もう一人分作れるわよ?」




「えっ?!じゃあ私の髪で作って下さい!!!」








博士の言葉に、マイの目が一層輝いた。







「あら、いいわよ〜」




「おいっ、マイ!」




「いいでしょ〜。何か楽しそうだし」









ニコニコと笑みを浮べるマイに、エドも強くは言えない。


別に害がないのであれば、あれほど楽しみにしているマイを止めるつもりもうちにはない。



結果、博士がマイの髪を持って執務室を出て行くのをうちらは黙って見送った。















そして現在・・・







「ふわぁ〜〜〜でも本当に可愛いよ、どうしよう・・・」






エド猫を見ながら至福だと言わんばかりのオーラを撒き散らしているマイ。


そんなマイの斜め後ろから、うちは改めてエド猫へと視線を向けた。







手の平サイズのエド。


服は白いシャツに黒いズボンで、髪は結ばずそのままの状態。


それだけでもけっこう珍しいのだが、やはり目を引くのは頭の上についている猫耳。


明るい茶色で温かそうなその耳は、マイに頭を撫でられるたびにピクピクと動いている。




そしてもう一つ目がいくのは、耳と同じ色の長い尻尾。


こっちは感情を素直に表しているように見える。


マイが頭を撫でれば嬉しそうにピンッと立つし、大佐が近付けば不快そうにパタパタ振っている。




あまり変化しない表情を見るより尻尾を見る方が今の感情がよく分かるんじゃないだろうか?


うちはそんなエド猫の様子を一通り見て、エドを振り返る。







「あれだな、お前と一緒であんまり可愛げねーなこいつ・・・」







うちの言葉に、エドは視線を逸らすだけで何も言わなかった・・・




















「出来たわよ〜」




「わぁ、本当ですか?!見せて下さい!」




「はい、どうぞ?」







博士から上機嫌で受け取るマイ。


その様子をうちは後ろから覗き込んだ。


まず目に付いたのは白い耳と白い尻尾。


それに揃えたような白いワンピースを身に着けた手の平サイズのマイ猫。


キョトンとした顔でうちらを見上げていた。


しかしすぐにピクリと耳が動いて、嬉しそうな笑みを浮べた。








「みゃ〜〜」






「「 っ!!! 」」








マイ猫の鳴き声に、大佐とハボ兄は同時に反応した。


そして・・・







「やっぱこういう姿は女性がしてこそだな・・・」



「俺、夢と希望を同時に見た気がしますよ・・・」







噛み締めるように言う大佐とハボ兄に思わず白い目を向けそうになる。


実行しなかったのは、その気持ちが分かってしまうほどにはうちも可愛いと思ってしまったからだ・・・


そんなうちらの様子には全く気づかずに、マイは意気揚々とエド猫の元へと向かう。








「ほーら、お友達だよ。仲良くしてね〜」







マイはそう言うと、マイ猫をエド猫から少し離れた所に下ろした。


急に下ろされた場所に不思議そうに辺りを見渡していたマイ猫だが、エド猫と目が合った瞬間固まった。


そして・・・









「みゃ〜みゃ〜みゃ〜〜〜!」








凄く嬉しそうな様子でエド猫へと抱きついた。


そんなマイ猫の様子に驚いているのか途惑っているのか、とにかく固まっているエド猫。


それはもうまんま誰かと誰かの姿を彷彿とさせるような光景だった・・・








「・・・・・お前のエド好きは遺伝子レベルからか」








うちの呟きに、さすがにマイも乾いた笑いを浮べた。




こうして東部で2匹の猫を飼う生活が始まった・・・



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