Let's meet again.
ただ、暇だったのだ。
だから兄に言われて、外を出歩いていただけ。
それが生んだ出会いなら、偶然っていうのかな。
それとも・・・必然?
Let's meet again.「うーっ」
「なんだよエルカ」
「暇!キルア兄遊ぼ?」
「いや、オレこれから試合だって言ったろ」
「うぅーキルア兄の意地悪・・・」
天空闘技場にて。
暇で暇で暇なエルカは、兄のキルアを前にふて腐れていた。
どういうわけか、たまたまエルカには今日試合が組まれておらず、逆にキルアはこれから試合だ。
暇が大嫌いなエルカは、兄に構ってもらえず膨れっ面・・・という現状である。
「ったく・・・そんな暇なら、そこら辺ぶらついてりゃいいだろ?」
「・・・でも」
「でも言うなよ・・・」
可愛いが手間のかかる(一応)1つ下の妹に、キルアは溜め息をついた。
そして、切り札を出す。
「この間見つけた店な、ケーキ屋なんだけどスゲェ美味くてさ・・・」
「・・・っ!!行ってくるね、キルア兄!場所教えてっ!!」
・・・こいついつか食い物で釣られるんじゃねーか、と密かに不安になったキルアだった。
□■□■□■
兄に教えてもらったケーキ屋まで、足音も軽やかに向かうエルカ。
と、途中でポケットから中途半端に出ていたハンカチが落ちたのだが、エルカは気付かない。
「・・・落としたよ」
不意にぽんと肩に手を置かれ、エルカは飛び上がった。
とっさにハンカチを拾ってくれたらしい人から身を引く。
――私が・・・気付かなかった!?
エルカは幼いが、それでも殺し屋としての自負はある。
気配に気付かないことなど滅多にあることではない。
――この人・・・私より強い・・・。
顔が強張る。
天空闘技場で負けることは、ある。
でもそれはあくまでもフィールド内の話。
現実世界で不意打ちなど受けたことはないし、危なかったら逃げられる。
でも、今目の前にいる人からは・・・逃げる自信が、ない。
「どうした?」
怪訝な顔で、エルカの顔を覗き込む彼女は、しかし敵意があるようには見えなかった。
自然、エルカの身体から力が抜ける。
「・・・なんでもない!!ハンカチ、ありがとう」
ハンカチを受け取り、そして思ったことを口に出した。
「お姉さん、髪綺麗だね」
「・・・おぉ、ありがと」
そこからどんどんと会話が組み立てられる。
自己紹介から始まって、これからの予定まで。
ハンカチを拾ってくれた人はルイというらしい。
「ね、ね、ルイ姉これから暇ってことだよね?一緒にケーキ屋さん行こうよ!」
「あー、美味しいって今噂のあの店か。俺も気になってたし行こうかなぁ」
「やった!」
結論:何故か仲良くなりました。
□■□■□■
「おっいしー!」
「エルカ、口にクリームついてんぞ」
今噂らしいそのケーキ屋は、案の定混んでいた。
その中でなんとか席を確保した2人は、それぞれのケーキをぱくついている。
エルカの前には、チョコレートケーキが。
ルイの前には、ケーキの王道・ショートケーキが。
ルイはエルカの口周りについたクリームを拭いてやりながら、「イチゴ食べる?」と尋ねる。
このケーキ屋では、ケーキを2つ以上注文すると、イチゴを皿に盛ったものがサービスされるという・・・よくわからないサービスをやっていた。
エルカが頷いたのを見て、ルイは皿からイチゴを取ってやる。
2人はすっかり打ち解けたようで、エルカも最初の恐怖は消えたようだった。
楽しい時間は、あっという間にすぎるもの。
「エルカは天空闘技場に泊まってるんだったよな?」
「うん。お兄ちゃんも一緒だよ!」
「そっか・・・頑張れよ」
「ありがとう!・・・ルイ姉も、なんか頑張ってね!!」
ポロリと師匠の愚痴を漏らしたルイに明るく言うと、苦笑いが返ってきた。
「頑張るよ」
夕日に照らされて、エルカの銀髪がオレンジ色に見える。
ふ、と一瞬目を伏せたエルカは、何かを決意したように、顔を上げた。
「ねえ・・・また、会える?」
酷く不安げに。
別れが寂しかった。
友達なんていなかったから。欲しいとも思わなかったけど。
・・・だけど、このまま別れるのは、嫌。
また会える?
揺れる瞳を見て何を思ったのだろう。
ルイは微笑んだ。
それは、夕日をバックに、怖いまでに美しかった。
「当たり前。また会えるって」
「・・・うん!!」
エルカは、今日1番の笑顔を見せた。
また会おうね。笑って、手を振った。
(ただいまキルア兄!・・・あのね、私ね、すっごい楽しかったよ)
End.
〜〜〜〜〜
相互記念で「涙の軌跡」の天音様よりいただきました!!
作品は、私の大好きなエルカちゃんが夢主の「殺戮人形は、」です!
私的にエルカちゃんがルイのことを「ルイ姉」と呼ぶことに萌え((ry
天音様。
本当にありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします!
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