おれ親いねーもん。
ぽつりと銀時が呟いた。
さわさわとススキが揺れる。
本人にしてみれば聞かせるつもりのなかったものを、小太郎は耳聡く聞き取って、後ろを振り向いた。
「先生がいらっしゃるではないか」
「・・・いや、先生は先生だし」
高く結った小太郎の髪は歩くたびに揺れて、それを後ろから眺めるのは銀時の秘かな楽しみだった。ススキと小太郎の髪がさわさわと揺れて、夕べの風に溶けてゆく。
「銀時!」
振り向いた小太郎はやおらがしっと両手をまとめて掴んだので、銀時は思わず腰を引いた。
「俺はおまえの親にはなれんが、友は親より長く一緒にいられるぞ」
「え、」
「それだけ長く俺がいたら、おまえは寂しくないだろう」
「別に寂しくねーよ」
「離れはせんから、安心していろ」
「いやあの」
相変わらずズレていて一方的な小太郎の言に、銀時は何か言ってやりたかった。けれど掴まれたままの両手も離せと言えずに、二人はたっぷりと夕暮れに染まった。
さわさわとススキが揺れている。
「・・・・・・ありがと」
やっぱ小話というからにはこんくらいのサイズであるべきだったんだろうな・・・