「アッハッハー元気にしちょったか金時ィー」

「オイヅラ何でこんなん連れてきちゃったの」
「ヅラじゃない桂だ。これは手土産だ」
「いらねーよお引取りください」
「そうか。様々な星の酒を持ってきたから呑もうとこやつが言うのでな。
銀時くんのおうちで呑もうかなーなんて話になったのだが・・・残念だ」
「オイ早く言えよソレをよ。何だァ辰馬よく来たな!まー入って入って」
「変わらんのーおんしら」


【酒とヨッパライの日々】


宇宙のあんな酒こんな酒・珍味ゲテモノ大集合。
ところ狭しと万事屋のテーブルに酒瓶(うち数本はお子様たち用ノンアルコール)が並べられると、何故かしら誰かしらどこかしらから気配を嗅ぎ取ってくるようで、万事屋はちょっとした宴会場と化した。
神楽と買い物に出た桂が長谷川を拾って戻り、お登勢とキャサリンを新八が迎え入れ、etc・・・。誰がいて誰がいないんだかもはやよくわからないまま乱痴気騒ぎが始まるのはもう自然の理・宇宙の摂理だ。
知らぬ顔の多いはずの坂本は、しかし持ち前の人なつこさとあとは酒の力ですっかり周りに馴染んでいる。異星の物珍しい酒を紹介するとともに語る入手のエピソードは面白おかしく場を沸かせた。
キャッツ星のマタタビ酒でキャサリンが潰れたころ、銀時と長谷川が飲み比べを始める。それに野次を飛ばしながらお登勢と坂本が何やら地球の酒について語り合っているのが万事屋を賑やかに彩っていた。
そして、

「・・・・・何だヨお前ら情けネーなー」

神楽がひととおりつまみを食べつくすころには、赤いユデダコどもがぐでんぐでんとのびていた。



「金時ィ!わしゃあ地球の酒ば飲みたりんぜよ!」
「ちょ、ゆすんないでくれる」
「ヅラぁ、その酒まだ残っちょるがかー」
「ヅラじゃない桂だ。生憎だな、これで終わりだ」
「なんじゃーつまらん。金時!飲みに行くぜよ!」
「だから今ゆすんないでって言ってるでしょーがァァア!!」

オメーの奢りならいーよ、ハイこの後まだ呑むひとー。
坂本の手から逃れた銀時がふらふらとした手つきでパンパン、と何とか手を叩いて呼びかけると、ユデダコの群れからちらほらと手が上がる。それをひぃふぅみぃ・・・と数えていると隣で桂と坂本が酔っ払いの顔でへらりと笑いあっていたので、銀時はそれを懐かしく思って見ていた。

「ちょっと銀さん、まだ飲むんですか。いくら坂本さんの奢りだからってもう皆へろへろですよ」
「いいかー八っつぁん、タダ酒出されたら潰れるまで飲むのが男の礼儀ってモンだ」
「きゃっほーまだ次行くアルか!ワタシご飯の美味しいトコロがいいヨ銀ちゃん!」
「・・・遅くに食べ過ぎると身体に悪いよ神楽ちゃん」


チェーンの居酒屋は、へべれけの集団を若干迷惑そうにしながらも暖かく迎えてくれた。
暖かいお絞りが肌に心地よい。もともとふらふらになっていた酔っ払いは小一時間ほどで完全に潰れてしまい、酒じゃあーと勢いこんで日本酒やら焼酎やらをチャンポンで胃に流し込んでいた坂本はほどなくテーブルに伏したまま動かなくなった。
やはりあの状態で飲みなおすというのも無理な話だったな。俺たちももう若くないということか。
人目もはばからず死屍累々を晒すテーブルを桂が苦笑して見渡している。いくら飲んでも顔に出ない桂は一番まともそうに見えたが、ゆらゆらと形のよい頭がさっきから揺れているので、こいつも相当キてるなと銀時は潰れた頭で考えた。
ダメな大人たちは飲んでは伏しそのうちゆらりと起き上がってはまた飲んで伏し、新八が何故そこまでと思うほどに意地になっては飲んでいる。タダ酒の威力のかくも恐ろしきよ、と新八は明日の万事屋が仕事にならないことをもうほとんど諦めた。

「すみませーんそろそろ閉店のお時間でしてぇ」
「オッもうそんなん?オイ辰馬財布だせ。支払いヨロシク」
「なんじゃぁ〜おりょうちゃんそんなトコ・・・」
「ちげーよバカ。財布持ってくぞ」

若い店員の声が頭上に降り注いだので、先程まで麦焼酎をごんごんと胃に収め屍の一員となっていた銀時は坂本の懐から分厚い財布を取り出し、危なげな足取りで会計を済ませにふらふらと出て行った。
それを見た桂と新八が、そろそろ帰り支度をさせなければ、と皆をたたき起こす。
うぇーとかぐぉおとか思い思いの呻きがあがり、這うように座敷を出るメンバーを見て、新八はこんな大人にだけはなるまいと堅く心に誓った。こんな大人っていうかもう大人になんてなりたくない。

「ヅラぁ、靴ば履けんぜよアッハッハー」
「坂本、お前は呑みすぎだ」
「履かせてくれんがかー」
「何だと!?まったく貴様という奴は・・・」
「あー坂本さんイイコトしてる、ヅラっちー俺も俺も」
「マダオたちばっかりズルイアル!ヅラァ、ワタシの靴も履かせるヨロシ」
「お前ら・・・!」
「・・・・・・・桂さん、ホントに履かせてあげなくてもいいんですよ」

支払いと陸奥への連絡を終えた銀時が戻ってくると、新八と桂が見事なチームプレーを展開していた。
桂が皆の靴を履かせ、ベルトコンベア式に新八に渡される。新八に立たされてやっと大人たちは自立歩行を始めた。が、その足取りはかなり危なげだ。
うわーヒデーなこりゃ。
自分も大分くらくらしながら、銀時は限界まで酒が入って甘ったれた酔っ払いどもの靴を桂が履かせてやっているのを暫くじっと眺めていた。

ハイじゃー解散。皆生きてお家まで辿りつくんだよー。
パンパン、とまた銀時が手を打った。坂本は陸奥が引き取りに来て、他はめいめいふらふらとしながら帰路の似たものを見つけて同道してゆく。神楽が途中でお妙のところに行きたがったので、新八が神楽を連れて帰っていった。
銀時と桂はそれを見送り、ふたり取り残されたままふうと息を吐いた。

「何だかんだで随分と飲んだな」
「まーな。あークソ水一杯飲んどくんだった・・・喉痛ェ」
「そこの自販機で何か買ってこい、俺も喉が渇いた」
「俺が行くのかよ・・・えーっとカルピスカルピス」
「カルピスだと?俺はお茶がいい」
「文句言うなら飲むんじゃねーよ」

酔っ払いの足取りでゆらゆらと揺れながら暗い細道を歩いてゆく。ろくに外灯も無いくせに、ぽつん、ぽつんと立つ自販機だけが煌々と足元をそこだけ照らしていた。
酒が入って火照った身体に冷たいペットボトルが気持ちいい。桂はこんな甘いものを、だから貴様は糖尿なんだと文句をつけながらちびちびとカルピスを口にし、ウルセーなじゃあ飲むな、とそれを銀時が桂の手から奪い取る。

「うおっ」
「どうした銀時」
「転んだ」
「貴様も酔っ払いだな。ホラ立て」
「・・・・・・」
「銀時?」
「・・・・・・起こして」

足をふらつかせて銀時が尻餅をつく。桂に促されても、銀時は動かなかった。駄々をこねる子供のように両手を伸ばして、不機嫌そうに桂を見上げて唇をとがらせる。
桂は一度目を丸くしたあと、何だお前まで甘ったれだな、さてはヤキモチか。と笑って両腕で銀時を引き上げた。

靴さぁ、履かせてやんなくてもよかったんじゃないの?と銀時は言わなかったが、桂は両腕にかかる重みと寄せられた銀時の眉を見てくつくつと笑い出した。




「あー頭痛ぇ・・・ハイハイ誰だよもー」

リリリン、と次の日は昼ごろから万事屋の電話が鳴りっぱなしだ。つまり酔って記憶をなくした面子の「昨日何かしませんでしたか」確認である。ウンウン酔ってた酔ってた、つーか俺も憶えてねーよ何かしましたか俺ねェちょっとオイ、と電話のたびに繰り返し、赤くなったり青くなったりする。
ひととおり済むころにはすっかりげんなりとして、シャワーでも浴びよう、と廊下に出た。


「アレ・・・俺カルピスなんて買ったっけ」


玄関に転がるペットボトルのカルピスに、やべーよ記憶ねーよともう一度青くなりながら、銀時は廊下の奥へと重い身体を引きずっていった。














本誌はアレでしたが、両親の実話を銀桂変換しちゃってつい。



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