君はすこし幼い。身体的にもまだまだ大人ではなかったが、それを差し引いたとしても些か君は無垢過ぎる。降り積もる雪と君の心となんて、比べるまでも無いくらいに。ぐしゃりと踏み潰せばそれはいとも簡単に汚れてしまう。

何か大切なものが終わっていくような気がして、何か大きな事が始まっていくような気がする。この時期っていうのは、みんなそんなもんだろう?
だけど実際の所は何も終わってはいないし何も始まっちゃいない。ただ、昨日と同じ真っ白な雪が降り積もっていくだけ。
さして広くもないベランダに通じる窓を開ければ、拳2個分くらいの小さな雪だるまと、指先を真っ赤にした君が居た。素手で作っていたのだろうか、本当に、頭の足りない。

「見て、ゆきだるま」

「馬鹿、そんなのいいから早く中に入れ」

無理矢理に室内に引きずり込むようにして、すっかり冷たくなった身体に毛布を投げ掛ける。暖房も入れて、牛乳でも温めてやるか。

「ゆき、だるま、」

「…………ああ、ありがとうな」

置き去りにされていた雪だるまを中に入れて、ベランダの窓を閉める。
一瞬目があったと思うとふにゃふにゃに歪んだ笑顔を見せるものだから。
駄目だ、と、警鐘を鳴らす理性を踏み潰して。乱暴に抱きしめた。その無垢な瞳を汚したくなった。

もしも本当に、あと数時間で、何かが終わり何かが始まるのだとしたら、この関係を終わりにしてしまおう。新しいあそびを始めよう。
冷え切った指先とは真逆に、絡む舌は熱い。何もしらないその中身を、ぐずぐずに溶かしてやりたい。芽生えてさえいない欲の先を自分だけに向けさせたい。

このまま時が止まってしまえばと、涙を流した。何も終わらず何も始まらず、このままで居られたならそれでよかった。腕に込めた力は抜けない、引き寄せた身体は離れない、数分前にはもう戻れないと知った。
涎を零した虚ろな瞳と視線が絡む。目の端で蕩けていく雪なんか、比べるまでも無かったんだ。
神様によろしく


 
2010/12/31

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