「…」

家に帰って、gooogle検索をしてみた。テニス部 贈り物 。


そこに、眼鏡クリーナーは無かった(落胆)。




「なぜ、あんなことを…」


「珍しい子が来てるね」


不二の言葉に耳を疑った。フェンス越しの応援は、珍しくない。だからこそ、珍しい子=名字だと信じがたくも、不二は確実に名字を見ていた。
そもそも、真田の事と言い、何故連絡先を教えなかったのか。不二の質問に動揺を感じてしまったのか。俺もまだまだ、油断せずにはいられないようだ。

「テニスしてる人って、何もらったら嬉しい?」

即答で、「眼鏡クリーナー」と答えた自分だったが。帰り道の笑いを堪える不二は見るに耐えず。それは短なる自分の欲求なのだと悟り、gooogle検索を終え、更なる確信を抱き、何故あんな返答をしたのか後悔している。よくよく考えてみれば、あれは

「真田への、お礼の品だな」

普段なら、即答する返しだったはず。
何故!眼鏡クリーナー!?いや、確かに、眼鏡をするものとして、眼鏡拭きはもちろん、眼鏡クリーナーは必需品なのだ。特に試合において、死角や反射は出来るだけ抑えたい。コンタクトも発達しているが、やはり、眼鏡の方が落ち着く。
……完全に、返答違いだ。


真面目で誠実な人だと思う。名字の絵から、常に感じる静かな熱意。それを思うに、不安は増していく。まさか、真田に本当に眼鏡クリーナーと共にタオルを返してしまうのか。いや、彼女なら、してしまうかもしれない。いや、しかし、真田は裸眼だ。いや、そもそも、真田が眼鏡をかけないことを知っているのか…。


「手塚、大丈夫か?」

「大石か、」

「今週、顔がやばいぞ…」

小声で大石が囁く。どうやら、悶々とした悩みが顔に出ているらしい。情けない。油断している自分を諌めたい。

「明日は、立海との練習試合もあるし、早めに切り上げようか」

「…そうだな」

…真田に、名字のことを連絡するのをすっかり忘れていた。冷静を繕い、部活を終えて、メールする。実は少し慌てている。



To真田
From手塚
Subすまないが、明日の練習試合の折に、お礼をしたい女子生徒がいるようだ。先日、助けてもらった際に、真田のタオルを預かっているらしい。それも返したいとの事だ。
明日はお互い、油断せずに頼む。



To手塚
From真田
Subわざわざ連絡痛み入る。大した事ではない。と伝えてくれ。





…名字とは会わないつもりなのか。



…迷った末に返信。


To真田
From手塚
Subタオルだけでも、きちんと返したいとの事だ。



To手塚
From真田
Sub相分かった。試合後に、校門で待つと伝えてくれ。



To真田
From真田
Sub感謝する。



というやり取りについて、名字に電話で伝えた。

「2人とも武士みたいだね」

「…そうか」

「ちゃんとお礼言えそうで良かった」

「…そうか」

「わざわざ、連絡取ってくれてありがとう」

「礼には及ばない」

「…ちなみに、試合って何時ぐらいに終わるの?」

「…」

「また、連絡する」

「あ、私、たぶん美術室にいるから。時間分かってれば自分でいくよ、」

「いや、終わったら、連絡する」

「あ、そう。ごめんね、ありがとう」

「いや、では、な」


……試合を見にこない名字に何故か落胆している俺は、この感情をまだ知らない。





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