「ちょ、やば、不二くんきたよ!」

「え、まじ!?」

「不二くんー!!」

フェンス越しデビューしたものの、黄色い声援がやばい。部活終わりの出待ちなのか、片付けが終わっても、見届ける女子もいた。
不二くんは、それこそ、男女ともに囲まれやすく、同じクラスになっても関わりが薄い。

「こんにちは」

「え、」

噂の爽やか系イケメン不二くん。なぜか、私と女友達(名前)を見ている。もはや声も出ないらしい、隣の女友達(名前)の限界のようだ。
確かに綺麗な顔だし、彼女いそうだよなー。いや、そしたら、彼女と帰るのでは。

そんなことを考えていたら、彼が話しかけてきた。

「名字さん、だよね?」

「はっ、はい」

え、私か。まさか。隣で「グッジョブ!」と聞こえてきた女友達(名前)の声。声でかいわ。

「君、美術部だったよね」

「あ、ええ、まあ」

「女友達(名字)さんは、茶道部だっけ?」

「そうそう!今日は、ちょうど2人とも休みで」


「ふーん、名字さんは、今度の題材探し?」

「…ん?」

「12月の青春展、出品するんだよね?」

「あ、うん。まあ…」

名前はださいが(失礼)、青春学園主催の展覧会。確か、今は大学生の展示をしていたはず。12月には、中高生の美術部からも出品予定。マイナーだけど、一般公開もしてるし、毎年の美術部的には大イベントの一つである。

「僕で良ければ、相談にのるよ」

「え、いや、そんな、恐れ多い」

「名前、チャンスよ!」

声でかいから、女友達(名前)よ。

「ふふっ、友達も面白いね、」

「…え、そんな」

おいおい、顔赤らめないでー!!周りの視線ちょっと痛いんだけど既に。とはいえ周りの女子は、テニス部の片付けも終わったせいか疎らに散っていく。不二くんは、どうやら、それを見越していたらしい。うーん、ちょっと計画的。別の意味で怖い。


「僕、名字さんの絵に興味があってね。」

「…は、はあ」

不二くんは、とても素敵ににこやかだけど、なんとなく私は苦笑いしか出来ずにいた。

「名字」

「あ、」

手塚くんがいつの間にか、いた。不二くんと帰るつもりなのだろうか。もはやライフ0の女友達(名前)を連れて、退散しようとしたが、手塚くんと目が合ってしまう。

「…」

「…」

なんという気まずさ。昨日の今日で、ライバルについて聞くのもなんとも言えない。

「…帰ろうか」

不二くんの一声。絶妙なタイミング。

「そうだな」

手塚くんも背を向けそうになる。真田くんのお礼、ど、どうすれば…?!いや、もう聞いてしまえ!


「あの!」

「名字さん?」

「テニスしてる人って、何もらったら嬉しい…かな」

不二くんは、きょとんとしていたけど。

「人によるけど、僕は、君の絵かな」

「…は」

聞く人を間違えたらしい。不二くん、笑ってるけど、私笑えない。

「て、手塚くんは…!」

「眼鏡クリーナーだな」

「……あ、ああ、ありがとう」

真田くん、眼鏡してなかったよね。手塚くんなら、昨日の今日で察してくれそうだったけど、無理なようだ。
手塚くんなりの親切心に感謝しながらも、結局、真田くんへのお礼は、1人で悩むしかないと感じた放課後。


「あ、名字さんも一緒に帰「お構いなく!」

女友達(名前)が何か言いたそうなのを後目に、私はフェンスを後にした。フェンス越しデビュー侮りがたし。

手塚くんは、
「油断せずに帰ることだ!」

と、叫んでいた。あれで同い年とは、真田くんと通ずる所があったのかもしれない。そんなことを思った私であった(失礼)。





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