クリスマスパーティー


「ごめんね! 遅れた!」
バンっと勢いよく扉を開ける麗奈。
突如ーーーーー
「あっはははははは。」
目の前の光景に笑いが止まらなかった。


「とんだ伏兵だよ・・・」
ぼそっとこぼす雪男に麗奈はぽんぽんと背をたたく。
「まあまあ、悪気はなかったんだから・・・」
まだ笑いをこらえきれてない様子の麗奈は慰めながらもくすくすと笑っている。
どうやらプレゼント交換をしたらしく雪男にしえみが選んだ2010年メガネが当たったらしい。
「でもきちんとつけて優しいね、ゆっきーは。」
「・・・・・・」
(あれ、黙っちゃった)
麗奈は機嫌をさらに悪くしたかと少し不安になる。
「・・・大丈夫だった?」
ふとこちらを向き逆に心配してくる雪男。目がとても真剣だった。
(昔みたい・・・)
その目が幼い頃怪我をしたときにした目と同じで麗奈はノスタルジックを感じる。
「大丈夫だったよ、すぐに片づいたから。」
安心させるように微笑みながら麗奈は言う。
(フェレス卿に引き留められてただけだし)
但しそれを言えばもっと心配してくるから言わないが。
「良かった。無理はしないでね。」
「うん。ありがと。」
正面を向く麗奈。目の前ではクリスマスパーティーに勤しむクラスメートがいる。
「心配してくれるのはすごく嬉しいんだけどね、・・・そのメガネで言われるとちょっとね、ごめん、笑ってしまう。」
ゴン
その言葉に雪男は壁に頭をぶつけた。
その横で麗奈はまだ笑いを堪えていた。


「おーい、麗奈。話は終わったか?」
燐がこちらに向かって手を振ってくる。
「うん、今行く。」
今日はクラスの親睦の意味も含めてクリスマスパーティーが開かれた。
丁度クラス全員任務がない(但し雪男が影で頑張ったのだが誰も知らない)ということでクリスマスと他宗教なはずの志摩が提案したのだ。もちろん一番最初にのったのは燐だったが。
それに向けて準備が進み、麗奈も例外なく参加していたのだが・・・


「悪魔ですか!?」
朝寮を出ようとしたところで麗奈のケータイがなり、出てみれば任務の話だった。
聞いてみれば上級レベルの祓魔師じゃないと手に負えないらしい。もちろん、麗奈は二つ返事で返した。


「楽しみだなー。」
鼻歌まじりに玄関を出る燐に続き、雪男も出ようとした。するとケータイが鳴り、反射的に雪男は出る。
「あっ、ゆっきー?」
出てみれば麗奈だった。
「!?どうかしましたか?」
麗奈からの電話をあまり兄に知られたくないのか雪男は至って先生モードで対応する。
「ごめん、先に謝っておく。なんか上級レベルの悪魔が出たみたいだから行ってくるね。今日いけないかもしれないからよろしく。じゃね。」
プツッーーーー
「・・・・・・・切れた。」
「えっ? 何、お前怒ってんの?」
慌てた様子で振り返る燐。急いで今朝起きたときからの自分を振り返り、何か機嫌を悪くさせたかと悩む。
「兄さん、」
「えっ、何、もしかしてこっそり朝飯の沢庵とったこと?」
思い当たることを取りあえず口走る燐に雪男は白い目を向ける。
「何の話だよ、というか僕の沢庵取ったんだ。」
ごごごごご・・・と後ろに何か黒いもなが見え、燐は余計にビクビクする。
「ま、それは後にして」
ふぅとため息をつく雪男。
「麗奈ちゃん、今日来れないんだって。」
燐は自分の耳を疑った。


「お前、プレゼント交換参加出来なかったな。」
燐は隣に来た麗奈に話かける。
(麗奈強いのはわかる。)
「うん、ちょっと残念。」
麗奈はははっと笑った。
(だけど、それについていけてない自分が悔しい・・・)
任務だと聞いたとき、自分も行きたい気持ちが先走った。サタンの力を使えば、今のエクスワイアの階級なんて屁でもない。
だがサタンの力を使いこなせない自分が行っても足手まといになるのは目に見えていた。
「・・・燐の鼻眼鏡なら遠慮しとく。」
手に持っていた自分が買い自分で当たった鼻眼鏡に手をのばしていたのに気づかれたらしい。
「何でわかったんだよ。」
「燐も優しいから、わかるよ。やること。ちょっとピントずれてるけど。」
「何だよ、ソレ。」
手元にあった飲み物を一気に飲み干す。
カランと空になったガラスの中にあった氷が音を立てる。
「強くなるからな。俺。」
「・・・うん。」
「サタンの力無くても、悪魔倒せるようになるからな。」
「・・・・・・・うん。」
「だから、無理すんなよな。」
ぽすっと燐の左手が麗奈の頭を撫でた。
「燐・・・。」
その声は小さく、横を見上げれば燐も同じようにこちらを見ている。
燐の左手はゆっくりと麗奈の顔を撫でおろしながら頬で止まる。
そのままスローモーションで燐の顔が麗奈に近き、



「はいはい、何やってんのかなー。」
今からケーキを食べるかーというところで麗奈はフォークをストップさせる。「シュラ!」
燐の背後に立ち、しっかりと肩を掴んで離さないのは霧隠シュラだった。
「ったく、ちょっと目を離した隙にこの危険因子は何しでかすやら。」
冷たい射抜くような目で燐を見下ろす。
冷や汗をかきながら燐は動けないでいた。本能が告げている。ヤバイ、コロサレル。
「麗奈ったら、何で任務のこと言わなかったんだよ。今、雪男から初めて聞いたし。あいつ、最初風邪って嘘ついてたんだぜ。」
そんな燐はもう眼中にないらしく、麗奈に話しかけるシュラ。
「うん、ごめん。でもシュラにはクラスのみんなと仲良くなって欲しかったし、」
斜め下を見ながら麗奈は答える。
両手を腰にあて、ハァとため息をつくシュラは麗奈を包み込むように抱きしめる。
「それ俺の役目・・・」
燐がぼそっと言ったのをシュラは肩越しに目で射殺した。
「余計な気を遣わんでよろしい。」
「ありがと、シュラ。」
一時そのままで、シュラはようやく麗奈を離した。
「で、また例によってメフィストの奴に捕まってたのか?」
「シュラ、フェレス卿よ。呼び捨てはいけないわ。」
「え?何、何の話?」
一人蚊帳の外にいた燐は興味深そうに入ってくる。
「麗奈が朝から任務に行ってこんなに遅いなんてあり得ない。どうせまたあのメフィストにでも捕まってたんだろ。って話。」
つまらなそうに説明するシュラ。
「!?え、何?任務で遅くなったんじゃないのか?」
はははと苦笑いする麗奈。
「お前、知らなかったのか。麗奈が任務早いのは周知だぞ。」
シュラは呆れてものも言えない様子だ。
「何、話してはんの?」
そこにケーキを皿にのけて志摩がやってきた。
「ごめんね志摩君。遅れて。」
「気にせんといてください。任務お疲れ様でした。あとキスしてくれたら許し・・・」
「何バカゆってんだか。」
志摩の言葉を遮ったのは神木だった。
「今だけならお前と意見合いそうや。」
そう言いながら勝呂と子猫丸もやって来る。
「麗奈ちゃん分のケーキ持って来たよー。」
「ありがとう、しえみ。」
しえみから差し出されたケーキを麗奈は受け取る。
「志摩くん、」
至極、真剣に麗奈は志摩を呼んだ。
「ん、何ですか?」
志摩は顔をあげて答える。
「キス、してもいいよ。」
その瞬間、
雪男は机に頭をぶつけ、
燐はフォークが滑り落ち、
神木は酷く慌てた顔をし、
勝呂は何も言えず固まり、
子猫丸は気管支に唾液が入ったらしく噎せ、
しえみは顔を真っ赤にし、
シュラはぶつぶつと呪文を唱え始めていた。
「麗奈さん・・・」
志摩の目が真剣になる。


「うっそーん。」
皆が真剣になっていたのが面白かったのか麗奈笑う。
「麗奈さん、嘘ならホンマにしましょう。」
すっと今度は志摩が麗奈の手を握ってきた。自分より大きな手に麗奈は顔を染める。
「ったく、麗奈さん困っとるやろーが。」
べりっという効果音つきで志摩を麗奈から勝呂は剥がした。
「あ、ありがと。」
「麗奈さん、コイツそういう冗談聞かないから気ィつけや。」
照れからか勝呂はそっぽを向く。すっとその顔に麗奈の手が伸びた。
勝呂の顔で止まり、すっと撫でた。
「なっ!?」
「クリーム、ついてた。」
ぺろっと自分の指についたクリームを麗奈は舐めた。
「なああああああああ!?」
あまりの恥ずかしさに勝呂は顔を真っ赤にし背を向けた。
「ははっ、坊は恥ずかしがりややな。」
「あんたはもっと恥じらいというものを持ちなさい。」
志摩の言葉に神木が一蹴した。



「お届けものでーす。」
そこに扉があき
「アマイモン!」
シュラが真っ先に構える。
「やだなあ、物騒じゃないですか。僕はただ兄上からお届けものをことづかっただけですよ。麗奈さんあてに。」
「へ?私?」
さっきあったときに渡せばいいものをと思いながら麗奈は荷物を受け取る。
「では、また。」
それだけ言ってアマイモンはピョーンと消えていった。
「なんだ、あのクソ野郎からの荷物は。」
シュラが半眼で呻く。
「何だろう・・・」
麗奈も気になりすぐにビリビリあける。
そして取り出した。
「・・・ミ、ミニスカサンタ」
かなり引き気味に神木が呟いた。
「やっぱりメフィストを先に葬るべきだった。」
シュラも重い腰をあげる。
(き、着てしい。けど口が裂けてもいえねぇ)
男性陣は必死に堪える。
「かわいいね、麗奈ちゃん似合いそう。」
「あっ、しえみもそう思う?なんかみんなあんまり好きじゃななさそうだから向こうの部屋で二人で着ようか。」
「うん。」
キャイキャイ言いながら、部屋を出る二人。
取り残された人たちに冷たい風が吹いた。


後日、しえみのところにサンタコスした麗奈の写メがないか聞きに行ったのは一人ではなかった。


back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -