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急遽決まった、生徒会メンバーとの観測会。
主旨は私の課題なのだが、既に課題を終えた翼や、同じ課題をこなしてきた一樹会長や颯斗先輩のおかげで
目標の星の座標もすぐに割り出せ、写真もうまく撮ることが出来たし、レポートを書くデータもたくさん採ることが出来た。
あとは、寮に帰ってこれらのデータをもとにレポートを書くだけだ。
予定していた観測時間もかなり短く済んだので、一樹会長の提案で時間いっぱいまで皆で星空を眺めることにした。
標高の高い星月学園の屋上庭園。冬の夜は気温が一桁になることもざらで、体感温度は0度以下になることもある。
そのため、予め防寒具として 颯斗先輩がアルミブランケットを用意してくれていた。
体温を逃さず保温するので、薄いけどとても温かい。
「ぬぬ!これはNASAが開発した素材だな!」
「なんだそりゃ」
「ぬいぬい知らないのか?これ、アポロ計画の時に宇宙服用に開発された素材なんだぞ?」
「それは初耳ですね。僕は登山用の防寒具売り場で見つけましたよ?」
「これはー、特殊な4層構造で出来ていて、人体の体温の80%を赤外線反射させることで体温を保持することが出来るんだ!」
「へぇー、翼は物知りだね」
「ぬぬん!なんていったって、将来の宇宙船開発者だからな!ぬわーっはっはっは!」
勢いで立ち上がった翼を他所に、私を含めた3人はアルミブランケットに身を包む。
「おい、彗。寒いだろ?こっちこいよ」
「・・・・・・・・一樹会長、発言がオヤジです」
「おま!オヤジって何だ!オヤジって!」
「そんなオヤジは放って置いて、彗さん、どうぞこちらへ。暖かいですよ?」
颯斗先輩が、先輩のブランケットの片側をあげて、私を招く。どうやら隣に座るよう促しているようだ。
「あ、いえ。自分のブランケットがありますから」
「颯斗!お前、俺をオヤジ呼ばわりすんな! で、さりげに抜け目ないのな?」
「寒がっている女性を見過ごせないだけです。彗さん、さぁどうぞ。遠慮しないで?」
「ぬわあああああ!そらそら!なにやってるのだ!」
がしっ
(えっ!?)
「いくらぬいぬいやそらそらでも、、、、彗だけはだめだ!絶対譲らない!」
「ちょ、ちょっと!翼!?」
いきなり後ろから羽交い絞めにされたかと思ったら、ぐいっと手を引かれる。
そのまま生徒会室の翼のラボまで連れてこられた。
翼がラボのドアを開けて、私をラボに押し込む。いつもより強引な行動に文句の一つも言ってやろうと思って振り向いたが視界が翼でさえぎられた。
「ちょっ、翼!?」
「・・・ごめん。もう少し、このままでいさせて?」
これで何度目だろう?今日はよく翼に抱きしめられる日だ。
恥ずかしい気持ちは在るものの、抱きしめられることに心地よさを感じて、そっと背中に手を回した。
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