この書類届けてくれないか?
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「おーい、成宮。この書類届けてくれないか?」
今日も陽日部長の声が総務庶務課内に響く。
総務庶務課という部署だけに、殆どの部署と接点があり、IT化されているとはいえ、まだまだ書類のやり取りも多い。
社内便も行き交っているのだが、部長がたまに渡し忘れた書類はこうして私にお呼びがかかって配達される。
・・・つか、私は伝書鳩じゃないんだが。
「またですか?部長が行ってくればいいじゃないですか」
「おま、・・・上司にも容赦ないよな。まぁ、いいじゃないか。気晴らしにもなるだろ?上司命令。行って来い」
「(ちっ)わかりました。で、今日は何処の部署ですか?」
「(今、舌打ちしなかったか?コイツ)えーっとな・・・おお、システムエンジニア室の土萌だ。」
「はい。じゃ、これを土萌さんに渡せばいいんですね」
「ああ!頼んだぞー!!」
ぶんぶんと手を振る上司を無視して、私はシステムエンジニア室へ向かった。
−−−
「失礼します。総務庶務課の成宮です。」
社員IDカードでシステムエンジニア室のドアを開け、受付の女性に声をかけた。
「成宮さんですね。陽日部長からお話は伺っています。その書類を土萌チーフにお渡しすればいいんですね?」
「(チーフ?お偉いさんだったんだ;)はい。では、これを・・・」
「Huh? Qui etes-vous?」
受付の女性と話していると、背後から聞いたことの無い言葉が降ってきた。
・・・復唱しようとしても口が回らん!
おそるおそる振り返ると、そこには女性と見紛う美人さんが立っていた。
「あ、チーフ。お疲れ様です。総務からの書類が届きました」
「・・・・・・」
「Merci, ・・・どうしたの、僕の顔に何か付いてる?」
土萌チーフの言葉で はっと我に帰る。
あまりにも「美人さん」だったので思わず見とれてしまった。いかんいかん!今は仕事中!恋ボケしている場合じゃない!
「あ、いや。あまりに綺麗だったので・・・・・・あ、今のは失言でした。し、失礼しますっ!」
私はおおきく一礼して、土萌チーフの前から脱兎のごとく立ち去った。
はー・・・・・・でも。うちの社内にあんなキレーなイケメンがいたのね。
英語・・・いやいや、外国語(何語か判別不能)喋ってたから外国人かなぁ?透き通るような赤、ってああいう感じなのかも。とにかく、物凄い目の保養だった!陽日部長に感謝、かなぁ?
私は足取りも軽く、自らの部署へと戻っていった。
−−−
「・・・ねぇ、今の子、どこの部署の子?」
「あ、はい。総務庶務課の成宮さんです。今年の新入社員なんですけど 陽日部長に可愛がられてて、よくああやってお使いに出されるんです」
「ふぅん。見たこと無いと思ったら、新入社員か」
「まぁ、わが社には社員が大勢居ますし。面識の無い社員は沢山居ますから」
受付の女性の言葉を遠くに聞きつつ、羊は受取った書類に目を落とした。
(・・・僕を見て綺麗と言った子は月子以外では初めてだな)
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「あ」
「え?」
お昼時、社員食堂にて。
午前中、システムエンジニア室で会ったイケメンさんに再会した。
うーん、やっぱり綺麗な赤。しかもよく似合ってる。こんな特徴のある色が似合うなんて、イケメンってマジ得だわ。
「Bonjour、またあえて嬉しいよ。」
「へっ!?」
・・・何だろう、この歯が浮きそうな台詞。サラリと言えてしまうのは彼がイケメンだから?誰か教えて!
「ねぇ、君。」
「は、はははははい!!何でしょうか!?」
背筋がピーンと伸びる様な感覚に襲われる。何やった、私?書類間違い?それとも破損?
「さっき持ってきてくれた書類、内容はあっているんだけど 出来れば英語表記の方にしてくれると助かる」
「え、あ、はい!わかりました。午後の始業前までには お届けに伺います!!」
「・・・ぷっ、」
「????」
急に笑い出した土萌チーフに、周囲の目線が痛い。ああ、イケメンだから女子社員達の嫉妬が激しいらしい。
私は無実だ!つか、そのチーフに何故笑われているんだ、私は!?
「成宮さんて、まじめだよね。ちょっとは気を抜けば良いのに」
イケメンの考えていることがわかりません
「む、むむむむ無理です!!!!」
「何で?こんなに可愛いんだから、肩の力を抜いたら君の魅力が更に押し出されるのに」
「押し出されなくて結構です! し、失礼しますっ!!!」
「・・・ふふっ、初々しくて可愛いなぁ。成宮さんって小動物みたい」
「おい、羊。新入社員をからかうなよ。」
「あ、いたの?バ哉太」
「てめ!お前は一々一言余分なんだよっ」
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