生徒会長はドS?

「まったく、あなたには心底驚かされますね」


職員室からの帰り道、隣を歩く颯斗会長からそんな言葉が降ってきた。
予想外どころか、声がかかるとも思っていなかったので それは間抜けな顔で先輩を見上げてしまった。
斜め上から降り注ぐ柔らかな微笑みに、私はいつも恍惚の表情を浮かべてしまう。


「またそんな間抜けな表情を。だからあなたはあんな簡単な議題で失言をするんです。もう少し生徒会の一員として毅然とした態度で会議に臨んでもらいたいものですね」


颯斗会長から痛い一言が浴びせられる。思わず見とれてしまったその微笑みは「黒さ」を含んでいたらしい。

颯斗会長は、いつも私に手厳しい。
星月学園生徒会は生徒会長の青空颯斗先輩、副会長の夜久月子先輩の下、会計の天羽翼先輩と、今年書記に任命された私 成宮彗で構成されている。
書記の私は一年生でありながら 颯斗先輩と一緒に校内の会議に参加することが多い。今日も職員との合同会議に連れて行かれ、会議の席で不意打ちに意見を求められた。
私の発言は会議の席に笑いを誘ったが、颯斗会長はお気に召さなかったようで今に至る。
生徒会室までの帰り道は、大方私への説教タイムに変わっていた。


「そ、そんなこと。先生達は『硬く考えなくていいから』って仰ったじゃないですか。だから、」

「だからといって後先考えない発言は慎んでください。・・・はぁ。あなたを見ていると一樹会長を思い出しますよ」

「えっ!?それって昨年の生徒会長、不知火一樹先輩ですか!?」


翼先輩からよく聞かされる不知火先輩の話。とても強引だったけどおおらかで優しくて、父親のような包容力があったらしい。
翼先輩とよく一緒になって仕事をさぼって颯斗先輩に怒られていた、という生徒会長らしくないところも私はとても親しみが持てた。
颯斗先輩もなんだかんだで不知火先輩には信頼を置いていたようだし、一度会ってみたいなぁと思うようになっていた。


「颯斗会長、不知火先輩はどんな方だったんですか?」

「一樹会長ですか?・・・ええ、あの人には手を焼かされましたよ、って、話を逸らそうとしてもそうは行きませんよ?」

「不知火先輩の話を持ち出したのは、颯斗会長じゃないですか?私のせいじゃありません」


つーん、と頬を膨らましてそっぽを向いた私を見て、颯斗会長のこめかみに青筋が立った。


「へぇ・・・・、僕は貴女に注意をしていたというのに。それに僕が傍にいるにも関わらず一樹会長の事で逆ギレとは。どの口が言いますか?」


ぎゅうううう、と膨らませた頬を抓られ引っ張られる。表情は柔らかだが、目が笑ってない!リアルに怖い!


「ちょ!ひゃやとかえひょう!いひゃいいひゃい!!」


あまりの痛さに この階の廊下に響き渡るほどの声をあげてしまった。その声に驚いた月子先輩が生徒会室からひょこっと顔を見せて下さった。
流石月子先輩!まさに天の助け!


「誰かと思ったら颯斗くんと彗ちゃん!・・・って!ちょっと颯斗くん!彗ちゃんが痛がってるじゃない!」

「僕の言うことを聞かないからおしおき中なんですよ。愛の鞭です」

「颯斗会長のドS」

「ほぉ・・・#」

「もう!颯斗君も彗ちゃんも喧嘩はおしまい!さあ、生徒会室に入ろう?」


月子先輩の仲裁のおかげで 颯斗会長がようやく私の頬から手を離してくれた。抓られたところがジンジン痛む。これは赤く腫れてしまうかもしれない。
仕方がありませんね、と言いたげに盛大なため息をついた颯斗会長は私をジロリと睨んだ後、小さな声でこう言った。


「・・・わかっていないようなのでもう一度言いますが、」

「?」

「貴女は僕の傍に居て、僕に構われていればいいんですよ。ずっと、ね」


颯斗会長にしては直球的な言葉に思わず息を呑む。今、微笑む笑顔の下で ものすごいことを言われた気がする。
まさかの展開に、一瞬で全身に火がついたような感覚に襲われてその場でフリーズした。


「成宮さん?」

「あ!はいっ!!」


颯斗会長の声で、弾かれたように私の足は颯斗会長の後を追いかけた。
・・・この熱は、暫く覚めそうも無い。


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