年長者を労わりましょう

「おやじ」

「・・・あのなぁ、四季。前々から言おうと思ってたんだが」

「何?・・・おやじ」

「その『おやじ』呼びはやめろおおおおおおおお!!!!!」


星詠み科に生徒会長、不知火一樹の声が響き渡った。




事の始まりはこうだ。


「9月だな。・・・10月の文化祭の準備で忙しいが、何かイベント事は無いものか・・・」


イベント好きの不知火が星詠み科の教室で考え事をしていた。ただ、彼の「独り言」は大方口に出ているので 何を考えているかは星詠み科の生徒に筒抜けなのである。

3学年同室の星詠み科の生徒にとって、この光景は日常茶飯事で、今年入学した1年生でさえ、既に驚かなくなったほどだ。



「9月・・・敬老の日」

「ん?」


珍しく、不知火の独り言に反応する勇者が現れた。頬杖をついていた手を離して振り返れば、休み時間は常に夢の住人である四季が立っていた。


「お、四季か。珍しいな、お前が起きているなんて」

「不知火の声、聞こえた。敬老の日・・・老人を敬愛し、長寿を祝う日」

「そうだな・・・親元を離れて寮暮らしをしている俺達には縁遠い日だが、それをイベント化するっていうのも手だな・・・」

「・・・違う」

「え?」

「祝う相手・・・身内じゃない。おやじ。」

「親ぁ?おいおい、それは父の日だろ?」

「違う。・・・おやじ。不知火のこと」

「はぁ!?お、俺か!?」

「そう。・・・不知火、この学園の年長者。だから、祝う、敬老の日に」

「ははは、面白い冗談だなぁ、四季?俺はおやじでもなければ年寄りでも無いぞ?」


表情をひきつらせつつ、話をそらそうとした不知火に、四季が空気を読まずに続ける。


「不知火、俺より2歳年上。・・・本当なら大学生。だから、おやじ」

「俺はおやじじゃない#」

「おやじ」


・・・・という展開で冒頭に戻る。



ぜいぜいと肩で息をする不知火に対し、しれっとした表情の四季。

こいつ、本気で俺を年寄りだと思ってるのか!?・・・冗談じゃない!俺はまだ20歳にもなってない未婚の血気盛んな若人だぞ!?
それなのに、一年浪人したからって年寄り扱いされてたまるか!!


「いいか!俺はおやじでもなければ年寄りでも無い!!四季、この話はこれで終わりだ!わかったな!?」

「わかった・・・不知火」

「よし!それでいい」


ようやく自分の意見が通ったと理解した不知火は満足気な表情を浮かべ、意気揚々と生徒会室へ向かった。


「・・・その言い方、やっぱりおやじ」




後日、星詠み科での顛末は密かに全校生徒に知られることなり、生徒会室には連日、大量の贈り物が届けられることになった。


「ほほう、今日も生徒会長様への貢物が届いたか!結構結構!ようやく俺の有り難味が理解されて俺は嬉しいぞ!」


一人勘違いしている不知火を尻目に、颯斗や月子はこれ以上波風を立たせまいと曖昧な笑顔で流していた。しかしその努力も、空気を読まずに入ってきた翼によって打ち砕かれることとなる。


「ぬぬ、おやじを祝う日のプレゼント、沢山来てるなー!じゃあ俺は『お年寄りいたわり君1号』をぬいぬいにやるぞ!さあ、受取るのだー!」

「はあ!?・・・・・じゃあ、これって全部、敬老の日のプレゼントか!?」

(ああ;言っちゃった)(・・・黙ってればいいものを、翼君・・・)

「そうだぞー?今更気が付いたのかぬいぬい。勘が鈍いところはやっぱりおやじだぬーん」

「だ・か・ら・・・・・俺は『おやじ』じゃねえええええええ!!!」

再び不知火一樹の声が学園中に響き渡った。


おまけ:

「誕生日でも無いのに、俺のところにプレゼントが沢山来るんだけど何だろうね〜?くひひ〜」



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☆桜士郎も浪人組なので、敬老の日対象らしいですw



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