七夕の夢
※長編小説中盤設定。”「青い魔法使い」=翼”の構図は成り立っていますが、絶賛片思い中時点です。
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「うー、今年も雨かぁ」
ひとりごちて、恨めしく窓の外を見た。
今日は7月7日、七夕。
宙の上では、織姫と彦星が一年に一度の逢瀬を楽しんでいる頃だろう。それを祝福するかのように瞬く、天の川の星達。星達の競演を、今年もこの目で見ることが出来なかった。
「・・・マジで北海道か沖縄に引っ越そうかな」
ぼそっと呟いた言葉は部屋に呑み込まれ、消えていく。
私は星空を見るのが大好きなのに、私の中で一年に一度のこの日の空を見ることが出来ないショックは計り知れない。
そのため、雨の七夕は本当に何もする気が起きなくて一人部屋に篭っているのが私のお決まりのパターンだ。
部活も委員会もサボって、携帯の電源も切り、世間から一切シャットアウト。部屋を暗くして、お気に入りのDVDを付ける。
テレビ画面に広がる無数の星達。夏の夜空に一際輝く一等星。そして川の対岸にもう一つ。愛しい妻を待ちわびる一等星。7月7日だけは、二人を隔てる天の川が薄くなる気がした。
暗い部屋で無数の星達を見ていたら、いつの間にか夢の中へ。彗はまどろみに身を任せた。
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7月7日、七夕。皆、屋上庭園で各々持参した望遠鏡で星空を見上げている。夜空に綺麗な天の川が見えていて、しかも今日はいっそう星達が輝きを増している気がする。
私は星の競演を静かに楽しみたくて、皆から少し離れたところで空を仰いていた。すると後ろから聞きなれた声が、私を宙から引き戻した。
「彗!」
「あ、翼。翼も来てたんだね。」
「うぬ!・・・あ、そうだ。なぁなぁ、彗は自分が織姫だったらどうする?」
「どうするって何?いきなり・・・まぁ、変装して家出して、彦星に会いに行くかも」
「ぬぬぬ!彗は意外に行動派なんだな!」
「えっへん!って、だって何もしないで待ってるなんて無理だもん」
「彦星は幸せ者なのだ!」
「お互い働き者だったのに、夫婦になった途端、働かなくなっちゃうくらいの大恋愛をしたんだよね?簡単に諦められないじゃん?」
「じゃあ、じゃあさ!俺が彦星だったら、彗は俺に会いに来てくれる?」
「へ(何故そうなる???)」
「俺はね!彗が織姫だったら、天帝の目もごまかせる透明な船を作って彗の処まで行って、彗を攫ってくるんだぞ!そうすれば、誰にも見つからないし、ずっとずっと一緒に居られる!」
「透明な宇宙船かー、凄いね!翼なら作れるんじゃないかな?」
「うぬ!天才に不可能は無いのだ!そしてこの発明だけは失敗しないよ!」
「え、何で?」
「だって、一番大好きな人と一生一緒に居られるかどうかの賭けなんだから ここで失敗は出来ない!」
「へ、え。そ、そうなんだ。」
今日の翼は饒舌な上に積極的だ。加えて誤解、、、いやいや今後の展開に期待しちゃいそうな発言を耳にしてしまったのだ。おかげで私の顔の熱がどんどん上っていく。
「彗?」
翼に覗き込まれ、視線がばっちり合う。
「え、や、ああああの!」
おいおい、さっきの会話。都合よく解釈すると壮大な告白としか聞こえないんだが。これはよく受取った方が良いのか、はたまた自重した方が良いのか。
なにより、どういう顔をして翼を見ればいい?
こういう状況に免疫が無いから、私は顔を赤らめることしかできない!誰か教えてえらい人!
「本当にどうしたのだ?」
急に顔を赤くして黙り込んでしまった私を覗き込む翼。しばらくぽかんとした表情の翼が、にやりと口端をあげた瞬間、
「おーい、翼!どこだぁー?」
不知火会長が翼を呼ぶ声がした。天の助け!
「グットタイミングぬいぬい!」
・・・・・・・・・・・・・・
・・・って、あれ?
部屋に響き渡った自分の声。今見えている風景は、真っ暗い部屋で、テレビの中の星空だけが光を放っている状況。
自分の寝言で起きたのなんて生まれて初めてだ。光も携帯からもシャットアウトし、私の眠りを邪魔するものがいなかったおかげで、すっかり眠りこけてしまっていたようだ。
・・・しばらく夢と現実の区別がつかなかった。
夢だと気が付いたのは、そこが自分の部屋だったからと、窓の外から雨音が聞こえる事実だった。
それよりも何よりも、私が「青い魔法使い」天羽翼からあんな扱いを受けるなんて、あ、あああありえないでしょ。
今夜はいろんな意味で眠れそうも無い
ちっ、夢だったのなら、恥ずかしがってないでもうちょっと積極的になっておけば良かったよ!
それにしても天羽翼ってば間近で見てもめっちゃイケメン!背も高いし頭もいいしさすがは俺の嫁!
にやりと笑った表情がドSっぽくて萌えた!いいね!
いやあ、それにしてもいい夢を見た。・・・今すぐ寝たら続きが見られるかもv そしたら私的展開でハッピーエンドにs(暴走が止まらないので省略されました)
☆夢主に腐女子フラグが立った気がする
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