第三羽 兄はシスコン
ふう。
彗を天文科に送って、俺は宇宙科の教室に入った。
鞄を机の上に置き、一息つく。
まったく彗は危なっかしい。気が気じゃない。
星月学園に入学してから思うことだが、やっぱり、彗と違う学科を選んだのは間違いだったのだろうか。
今頃、またクラスメイト達に囲まれてはいないだろうか。困って教室から脱走していないだろうか。先生に怒られたりしていないだろうか。
・・・俺が極度のシスコンなのは分かっている。それでも彗のことが気になってしょうがないんだ。
ぶすーっとした表情で教室の天井に睨みをきかせているとクラスメイト達が話しかけてきた。
「おーい、昴?どしたー?」
手を目の前でぶんぶん振られているのにようやく気がつき、ああ、悪い、と目線を合わせて答える。
「なあ、今日彗ちゃんは学校に来たのか?」
「ああ、さっき送り届けてきた。ついでに天文科のやつらにガン飛ばしてきた」
「うわぁ・・・お前、それやったら彗ちゃんに誰も近づかないだろー?」
「だからこそ、だろ」
「このシスコン」
「うるさい#」
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あれから約1ヶ月が経とうという頃、5月に行われるオリエンテーションキャンプについて説明会があった。
1年生合同で行われたため、天文科に彗がいるのも確認できる。
俺に気が付いた彗がこちらに手を振っている。友達も数人出来たようで、俺が毎日口酸っぱく言っている単独行動をしないよう、常に一緒に行動してもらっているようだ。
程なくして、教師からの説明が始まった。
「えー、では。来週までにグループ分けをしますので3人一組のグループを作って書類を提出してください。」
オリエンテーションキャンプ中は3人一組のグループで行動することになっている。
彗を大勢の狼どもから守るため、当然のように、俺は彗と同じグループになろうと決めていた。が、その希望は次の教師からの言葉で打ち砕かれた。
「なお、グループ分けは同じ学科内で行ってください。人数があふれた場合は、この限りではありません」
がっくり。
彗とは同じグループになれないのか。
・・・つくづく自分の学科選択ぶりを呪ってしまう。授業は楽しいが、彗を守れないのは辛い。
他の科では賑やかなグループ分けが始まっていた。・・・若干煩いクラスもあるようだが。ぶすっとしていると、クラスメイトから声をかけられた。
「昴、彗ちゃんと同じグループになれないからって膨れるなよ」
「元々学科が違うんだから諦めろって」
「あーあ、でも天文科の奴ら羨ましいよな〜。女子と同じグループになれる可能性があるんだぜ?楽しさが全然違うじゃんか」
「そうそう、天と地の差だよな」
「・・・ほう、ではそんな減らず口をきくお前には俺が一緒のグループになる権利をやろう」
そういうと、そいつらのグループ申請書を奪い、教師の下へ持っていく。
「な! ちょ、昴!!! 遠慮する!」
「やめろー! 地獄のオリキャンになるだろうが!」
「ふん、せいぜい楽しみにしているんだな」
「「昴、こええよ〜」」
「だめだよ、昴、友達にそんなこと言っちゃ!」
ん?
聞き覚えのある声に振り向くと、傍に彗がいた。
「!!!! な! おま、いつの間に」
「昴はもうグループ決めたんだね、さすがだねぇ」
慌てる俺に対し、彗はニコニコ上機嫌だ。
「よっ、彗ちゃん」
「あ、こんにちはー」
「もうグループ決めたの?」
「それがねぇ、誰も一緒のグループになってくれなくて」
は?
宇宙科だけでなく、他の科も含め周りの一同が目を丸くして此方に視線を送る。
「最初は小熊君たちと同じグループだったんだけど 天文科で軽い暴動が起きて、先生が騒ぎを収めるために『成宮はどこのグループにも属さなくて良し!』って」
・・・・・・ああ、さっき煩かったクラスは天文科か。皆必死だな。
「まぁ、大丈夫だよ、なんとかなるってー」
「お前なぁ・・・」
「彗ちゃんって、天然ボケで癒されるよな・・・」
「えっ? 何か言った?」
「「い、いえ! 何にも!」」
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