第二十四羽 小休止
とある部屋では、宇宙科の面々が勢ぞろいしていた。
「とにかく! 俺達は時間単位で成宮さんと同じグループになる事を希望する!」
「だから何でだ!」
構図:宇宙科(昴、梓、翼を除く)VS 昴、梓、翼
「俺達だって、成宮さんと一緒に行動したいんだよ! 成宮たちだけずるいぞ! 俺達にも夢を分けろ!」
「第一何だ、その夢とやらは。欲望の間違いじゃないのか」
「なにおう! 健全な男子高校生の立派な夢だろうが」
「それが欲望だといっているんだ!」
翼と梓は、昴の後ろで傍観者を決め込んでいた。翼は相変わらず発明品をいじり、梓に至っては「よくやるよねぇ・・・」とため息をつく。
そんな傍観者二人にも、宇宙科の面々は攻撃を仕掛けてきた。
「天羽! 木ノ瀬! お前らもだ! 日頃から俺達より成宮さんと一緒にいる時間が多いくせに、なんでお前らばかりが一緒のグループなんだよ!」
「そんなこと言われてもねぇ。僕達は先生から正当に割り当てられたんだけど?」
「ぬはは、そういうこと!」
ぐぬぬ・・・と悔しそうにする他一同。「リア充どもめ!」と負け犬の遠吠えが響き渡る。そんな彼らに昴がジロリと睨みを効かせた。
「彗と話しちゃいけないとは言っていない。ただ、」
「「「「ただ?」」」」
予想外の発言に沸く面々。だが、
「・・・あいつに何か悪さでもしてみろ、俺が許さない。八つ裂き程度は覚悟しておけ」
((((怖っ!!!!!)))
昴の威圧に一同が凍りついた。・・・八つ裂きって!? もしかしなくても生きて還れなくね!?
「俺も同感! 絶対だめだかんな!!」
「成宮って、ホント、シスコンだよねぇ」
その言葉に、昴がジロリと振り向く。木ノ瀬梓がニヤニヤしながら昴を見ていた。
「・・・木ノ瀬、特にお前だ。彗に手出しなどしたら、お前は八つ裂き程度じゃ済まないぞ」
「へぇ、それは御免蒙りたいね」
今度は昴と梓が対立を始めた。一触即発の雰囲気に、その場が再び凍りついた。
「「ああ、だめだ・・・こいつらがいる限り、成宮さんとはお近づきになれない・・・」」」
夢を見た。
いや、今夢を見ているのか?
誰かに頭を撫でられている。
時々私の髪を梳くその仕草から、控えめな愛情を感じる。こういうも、悪くない、かな・・・
決まった速度で梳かれる髪、温かな体温、あまりの心地よさに、私の意識は再び眠りの深淵に導かれる。
「−−−−・・・」
遠くで何か聞こえた気がしたけれど、そのときの私には既に聞き取ることは出来なかった。
「・・・・・・」
彗の髪を梳くその人物は、静かに彗の部屋から出て行った。
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携帯の着信音でまどろみから目を醒ました。
時刻は午前6時。彗はむくっと起きて、携帯を見た。
”昴 ”
えっ? 昴?
私は慌てて通話ボタンを押す。
「もしもし?」
「彗か、おはよう。「ぬあー!彗か!彗ー!」」
「あ、あれ、近くに翼がいるの?」
「ああ、そのことなんだが。」
何故こんな朝早くに昴が翼と一緒にいるのか疑問に思っていた。
「翼、どうしたの?」
「ああ、天羽だが、お前の部屋に向かおうとしていたので、捕獲した」
「は?」
捕獲って・・・
多分、翼は私を起こしに行こうとしてくれたんだろう。そこを昴に見つかった、ということか。
「朝からお疲れ様ですな」
「まったくだ。だいたい女子の部屋に行こうとするなんて 仮にも嫁入り前の娘だぞ? 間違いがあったらどうする?」
「ぬぬ、そこは大丈夫だぞ! 俺が一生面倒見るし!」
「だからなあ、そういうことじゃないんだ!!」
「ぬ! う、わあ! やめろ昴!! いだだだだ!」
「す、昴!?」
察するに、昴にヘッドロックでもされているのか。
あんまり翼をいじめないでね、と釘を刺して私は電話を切った。
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