第二十一羽 賢者の策略

数日前、僕は成宮兄妹たちに 僕も運命の輪の一翼であることをカミングアウトした。


今思えば、黙っていてもよかったのかもしれない。でもそれじゃあ面白く無いでしょ?
それに、こんなに興味をそそるものから僕だけ除外されるなんて、夢中になっているおもちゃをとりあげられるようなものだ。
担任から配布された 改訂版オリキャンのグループ分け一覧を見ながら 僕はそんなことを考えていた。



第12グループ:木ノ瀬梓、天羽翼、成宮昴、成宮彗


奇しくも、運命の子供達は同じグループ。
しかもリーダーは僕だ。
なんという『運命』の巡りあわせだろうか。何かのご褒美か?


ちら、と横目である存在たちを見やる。

成宮妹が何かの用事で宇宙科に来ていて、何故か翼は彼女に抱きついている。つか、翼ってば いつの間に成宮妹と仲良くなったのさ?



「なぁなぁ、彗! 向こうで何して遊ぶ?」

「えー、とりあえず言われたことやってから遊ぼうよ」

「ぬあー! それじゃつまんない! せっかく一緒にいられるのに!」

「おい! 天羽! 彗に抱きつくんじゃない! ・・・彗も何とか言えよ!」

「うーん、翼、重いよー。離れてくれない?」

「やだ」

「ほら、この通り」

「お前らなぁ・・・」



なんだろう、このやりとり。

オリキャンが近いこともあり、何かと宇宙科に足を運ぶ事が多くなった成宮妹に、宇宙科のやつらも成宮妹に興味を持ち出したようだ。
ほら、今この瞬間にも成宮妹に話しかけてくるクラスメイトがいる。



「成宮さん、宇宙科に組まれるなら俺らと同じグループだったら良かったのに」

「木ノ瀬のグループがつまらなかったら、いつでも遊びに来てよ」

「一緒に枕投げしようよ、楽しいよー!」

「ぬぬ! 彗は俺達のグループだ! そして彗は俺のだからだめ!」

「おいこら、天羽! いつから彗がお前のものになったんだ? それに女子が男子の部屋に遊びに行けるわけ無いだろう? お前らも発言を慎んだらどうだ?」

「ちぇ、なんだよ、昴は相変わらず硬いんだから」

「うるさい、黙れ」



・・・・・・・・・・・・・・・


なんだろう、このもやもやは。


誰かを取られたから、とかいう子供じみたものじゃない。

成宮妹が宇宙科に来て、隙あらば話したい、とかいうものでもない。

なんだかわからないけど・・・面白くない。


・・・よし、ちょっとからかってやるか。


ほんの悪戯心を持ったまま僕は席を立ち、翼や成宮兄妹のもとに歩み寄る。兄の昴が僕に気づいて、顔を上げた。



「成宮、翼、成宮さん、同じグループだね。よろしく」

「・・・ああ。木ノ瀬、よろしく頼む。」

「ぬははー、梓、よろしくな! とにかく皆一緒でよかったのだ!」

「よ、よろしく・・・」



成宮妹は遠慮気味にそう言った。昨日の今日で、僕を警戒しているのか、表情が硬い。



・・・・・・へぇ。それならば。



ちゅ。



成宮妹のおでこにキスを落としてみる。これでどうだ?



「!!っな!!」

「!!ぬあ!!」



翼と昴が逆上する中、


「・・・・・・」


成宮妹は無言だ。表情の硬さは緩んだが、僕を見上げてぽかんとしている。まるで何が起きたか解らないといったように。



「き、木ノ瀬ェ! お前、一体何を!!」

「梓! 彗に何するんだよ!」

「何って、キス。外国じゃ常識でしょ?」

「「ここは日本だ!!」」

「はいはい、すいませんでした」

「お、おのれ木ノ瀬!!」

「まったく、梓は油断も隙も無いのだ。大丈夫か?彗?」

「へ? あ、うん。って、何が起きた?」



え。



成宮妹のありえない一言にその場の雰囲気がフリーズする。当の本人だけ「え?なに?どしたの?」と周囲を見回している。



・・・・・・もしかしてこいつ、バカ?



「ま、まぁ、分からなかったならいい。」

「なぁなぁ彗! 俺もしていい?」

「え? 何を」

「おい! 天羽! この期に及んでドサクサに紛れるな!」

「ぬはは! ばれた! 昴が怒ったのだー!!」



・・・まただ。

ちょっかいを出しているのは僕なのに、何故か僕は蚊帳の外だ。どうやら成宮妹は、天然ボケのようだ。それも相当の。そうだ、そうに決まっている。
こちらから関わっていかないと、成宮妹からしたら存在自体がぼやけてしまう気がする。



「成宮さん」

「っうわあ!」



今度は成宮妹の背中から抱きついてみた。今回は予想通り、成宮妹は反応を示した。手ごたえついでに、その耳にご挨拶。



「・・・・・・僕をその気にさせたんだから、覚悟してよね?」



わたわた慌てる成宮妹と、その様を見てフリーズしていた昴と翼が梓に詰め寄る。勿論、それは梓に容易にかわされてしまうのだけれど。



「ふふ、オリエンテーションキャンプ、楽しみだね」

「俺は木ノ瀬と天羽が彗と同じグループなんて・・・ものすごく心配だ!」

「彗! 俺がずーっと傍で守ってやるからな!」

「え、ずっとは無理なんじゃないかな?」



それぞれの思いをのせて、オリエンテーションキャンプ初日を迎えた。

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