第十二羽 静かに、そして確実に

「英空じいちゃんから聞いた”予言”、もう一度噛み砕いてみたら?」


梓が俺にくれた、”予言”を読み解く鍵を使って 俺は自分の未来を開けてみた。


俺がここで誰かと出会う。しかもその相手は俺の一番星・・・じいちゃん曰く”お姫さま”らしい。
問題は・・・”宙を翔ける星”って何だ?これがいわゆる”お姫さま”の正体なのか?


空を翔けるって、ペガサスか何かか?
それとも物凄い速さで飛んで行く鳥とか?
宇宙船で地球にやってきたエイリアン?


ぬああ! どれも人間じゃなくなっちゃうぞ! 流石に俺のお姫様は人間じゃないと困るのだ。


俺は頭を抱えて、自室で唯一寝転がれるベッドの上にダイブした。ごろんと仰向けになって真っ暗な部屋の天井をぼーっと眺め見る。



「・・・・・・おかしいよな。俺。ずーっと、一人がいいって言っていたのに。気が付いたら俺の一番星を探してる」



両手を天井に向かって伸ばし、満点の夜空に瞬く星を掴む仕草をしてみる。掴めそうだけど、掴めない星達。見えるけど、届かない存在。なんてもどかしい。



「”宙を翔ける星”か。なんだか流れ星みたいだな」



そもそも流れ星って、地球周辺の小さな塵が大気圏に突入することで起こる現象だから、受け止める前になくなっちゃう。博物館とかに展示してある小さな隕石は、かなりの確率で地上まで落ちて来れた言わば”星のかけら”だ。
もし、流れ星に関係している人だとしたら、

流れ星を研究している天文学者?
流れ星を見つけるのが上手な子?
お姫様の名前が流れ星?


・・・・・・・・・


「うぬぬ〜〜、やっぱりよくわからないのだ」



俺にもわからない問題があったんだ。いや、これは方程式や定義が無いから逆に俺じゃ解けない問題なんだ。大人にならないとわからないというのは、人生経験を積んで人の気持ちがわかるようにならないと解けないんだ。
うぬぬ、だとしたら今の俺じゃ結構難しいぞ。年は取ったけどあまり人の気持ちってわからないし。うーん、どうしよ・・・・・・


ベッドに長く身を預けていたせいか、俺の思考回路は鈍り、瞼が次第に重くなってきた。・・・・・・そのまま俺は微睡に身を任せた。








−−−

「成宮さんって、やっぱり中学校の友達と今でもメール交換したりするの?」



天文科の教室では彗と小熊が携帯メールの話題で盛り上がっていた。自然にクラスメイトが集まりだす。



「うん。結構頻繁だよ。私、メール大好きだし!!」

「「「・・・・・・えっ(ちょっと期待)」」」

「・・・・・・何、その間は?」

「っ、いやっ、特に意味は無いんだけどっ! そ、その・・・」

「?」

「僕と、、あ、アドレス交換してもらえたら、う、嬉しいな、なんて・・・」

「いいよー」

「・・・・・・えっ!?」

「はい、じゃー赤外線で送るから受信してー」

「えっ、あっ、はい!」

「あーっ! 小熊ばっかりずるいぞ!俺も交換したい!」

「成宮さん、次、俺ね!!」

「あー、はいはい順番順番!」



ブブブ・・・・・・



小熊と赤外線でアドレス交換が済んだところで、携帯にメールの着信を知らせる振動が走った。何だろう? と思いつつ、彗は着信したばかりのメールを開いた。

メールの送り主は昴だ。



「成宮さん? どうしたの?」

「んー? 昴からメール。何だろう?」



・・・・・・・・・・・・




ガタン!!!



「・・・っ!成宮さん?」



急に席から立ち上がった彗を見て、小熊が驚いて声を上げた。

その声に促されるように、彗は小熊の方を向く。



「小熊くん! オリエンテーションキャンプのグループ分け、私、宇宙科なんだって!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「「「「な! なにぃぃぃぃぃぃぃ!?」」」」





彗の発言に、天文科一同が驚愕の声をあげる。それはそのはず。グループ分けについては、誰が彗と同じグループになるかでクラス全員で揉めた結果、教師に叱られ、彗はどこにも属さないという判断が下されたからだ。
それなのに、何故専科外の宇宙科にグループ分けされているのか、天文科全員が驚かない訳が無い。

そこへタイミングよく(?)、担任が教室に入ってきた。



「おーい、SHR始めるぞー。席に・・・」

「せんせえええええええ! オリキャンのグループ分け一覧見せてください!!」

「うわっ!! 何すんだ成宮! ・・・って、おい!」



彗は担任からグループ分け一覧のプリントを強奪し、自分の名前を探し始めた。他の生徒も、彗を囲むようにしてプリントの内容を凝視している。



・・・・・・・・・・・・・・・



「あーっ! 本当だ! 私、宇宙科のグループに入ってる!」

「えっ!? ほ、本当だ。てか、何で!?」

「ちょ、先生! 一体どういうことなんですか!?」

「何で成宮さんが宇宙科に!?」



プリントに群がる生徒、担任に詰め寄る生徒、頭を抱える生徒。天文科は軽いパニック状態に陥っていた。



「ぅわっ! あぶなっ! 〜〜ちょ、待て!お前ら落ち着け!! 説明するから!」



生徒達に詰め寄られ、今にも押しつぶされそうな担任がそう言うと、生徒達はピタッと行動を止めた。彗を含めた他の生徒達も、担任の方へ視線を向ける。



「この前、宇宙科の担任から、人数が足りなくなったんで誰か回してくれないか? と打診があったんだよ。」

「「「「「へぇ・・・・・・・・・・・・ で?」」」」」

「・・・お前ら何か怖くね? それで、ちょうど成宮がどこにも所属していなかったんで、本人の承諾を得て回ってもらうことにしたんだよ」

「・・・・・・本当? 成宮さん?」

「・・・へ? ・・・えーっと・・・」



−−−−彗、数日前の回想−−−−−−−−−−

 《先生、何か御用ですか?》

 《ああ、成宮。実はオリエンテーションのグループ分けなんだが》

 《はい?》

 《宇宙科の生徒が人数調整できなくて困ってるらしいんだ。お前、足りないところに入ってくれないか?》

 《宇宙科ですか? 兄がいるんでいいですよ》

 《本当か! それは助かる!! じゃ、早速調整させてもらうな》

 《はい。》

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「・・・って! 成宮さん! OKしちゃったの!?」

「ああ、そういえば。・・・もしかしてあの時の話がこうなったわけですか?」

「そうだよ! ・・・だからお前ら、凄むなよ! 俺のせいじゃないぞ! 怖いだろうが!」

「「「「「・・・先生が成宮さんに白羽の矢を立てなければこんなことになりませんでした」」」」」

「すみませんでした。ごめんなさい。でも決まっちゃったから変えられません」

「「「「「せーんせーい??」」」」」

「ひぃぃぃぃ!」



生徒に詰め寄られる担任を他所に、当事者の彗は至って楽天的だった。



「そっか、私起因なら仕方ない。宇宙科には昴も居るしなんとかなるでしょ」

「・・・・・・成宮さぁん・・・・・・」

「どしたの、小熊くん? 心配してくれてるの? 大丈夫だよー。クラスごとの講義は天文科で受けるんだから、その時は戻ってくるよ」

「「「「「うわああああん、成宮さああああん!!」」」」」



彗は涙目で縋りつくクラスメイト達の反応に驚きつつも、「ね、大丈夫だから」となだめるのに必死だった。
そして、昴からのメール、


”放課後、宇宙科に来い。話がある”


にも更なるトラブルの予感がしてならなかった。

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