第七羽 行く手を阻んでも、事は確実に進行する

放課後、兄の昴にきつく言われていた事も忘れ、私は一人で1年宇宙科にやってきた。せっかく月子先輩が教えてくれたんだから、速攻返しに行かねば!

教室をちらっと覗いたら、SHRが終わってしばらく経っているのか、教室に居る生徒はまばらだった。

・・・幸いにも、昴は教室に居なかった。 ぃよっしゃあああああ!ラッキー



「あ、あの! ここに、天羽くんはいますか?」



教室内に居た生徒に声を掛けると、普段聞きなれない高域の声にみなの視線が此方に集中する。・・・と同時に、


「うおおおおおお! 女子だ!」

「昴の妹の彗ちゃんだよね? 彗ちゃんのほうから来てくれるなんて!」

「お、俺、何気に居残っててヨカッター!!!」


あれよあれよという間に、男子生徒に囲まれた。・・・え、何?何が、起きた!? つか、何で名前知ってるの? そして近い!!!!



「何なに? 昴に用事?」

「彗ちゃん、今日みたいに気軽に宇宙科に来てよ。ね!」

「ねぇ彗ちゃん、よかったらメアド交換しない?」



囲まれた上に、思い思いの言葉をかけてくる宇宙科男子達。・・・皆さん目の色が違うのは気のせい? 気のせいだよね!?



「あ、いや。今日は天羽君に用事があって・・・」

「「「・・・えー、なんだ、天羽かぁ」」」



一同、がっかりした様子で頭を垂れた。や、そんなに落胆しなくてもいいんじゃ。



「天羽なら、生徒会室にいるんじゃないか?」

「ああ、あいつ、SHR終わるとすぐにいなくなるからな」

「それはそうと彗ちゃん、天羽への用事は後にして、俺達と話そうよ。天文科の事、教えて欲しいな」

「・・・ほう、では俺が貴様らに教えてやろう」




ギクッ!!!!




背後から聞こえてきた怒気をはらんだその低い声に、私を含めた一同が背筋を凍らせた。

おそるおそる振り返ってみると、真っ黒オーラを背負った昴が立っていた。



「・・・お前ら、妹を囲んで何をしている?」

「い、いや! これは、その!」

「彗ちゃんが天羽に用事があるから、ってここにきてくれたんだよ!」

「女の子が来てくれたんで嬉し・・・いや、何か困ってることが無いかとだな!」



それぞれの苦しい言い訳を遠くに聞きながら、昴は私に目線を向けてきた。こ、怖っ!!!



「彗・・・俺、ここには絶対に来るなって言ったよな?」

「・・・ええ言いました」

「では何故来た?」

「・・・天羽くんに用事があったから、ですよ」

「何? 天羽に?」



怪訝な表情の昴が教室を覗いた瞬間を狙って、私は男子生徒の輪の中から一瞬の隙を狙って逃げ出した。



「「「あっ! 彗ちゃん!!」」」

「彗!」

「ごめーん! お説教なら後で聞くから! 今は急いでるの!」


自慢じゃないが逃げ足だけは速い。あっという間に宇宙科の面々を撒いて5階へ急いだ。


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