「く、あぁぁ……」 欠伸を噛み殺しながらも、何故か目はパッチリな朝。テレビを付け、冷蔵庫からいちご牛乳を取り出すとパックに口をつけ飲み干した。 「なんだ、これで最後かよ」 頭のなかでいちご牛乳を買うのをメモし、暫くニュースを見た。 日曜日の朝、昨日までどんよりとした空は綺麗に青く凛と澄んだそれだった。カーテンを開けて、たまった洗濯物を回し、のんびりと過ごす。こんなゆったりした日曜日はいつぶりだろうか。いつもなら昼まで寝て、だらだらと過ごしているはずなのに。 「あー、やべ、課題やらねェと」 明日提出のレポートの存在を思い出し、パソコンに向かおうかと思ったがそんな気分ではない。あとにしよう。 「さーて……」 無性に部屋の片付けがしたくなった。レポートから逃げ出したいのか、ただの気まぐれか。たぶん後者だ。テスト前で追われる勉強から逃避するために部屋の掃除をするものと心境は似ているが、特に今はまだ追い詰められていない。え、レポート?そんなの知るかよ。大学入ればレポートレポートレポート。殺す気かよほんと。 そんな感じで片付いた部屋。3日持たねぇなこれ、と笑いながら乾いた洗濯物を取り込もうとベランダに出る。つむじ風がやんわりと洗濯物を揺らしていた。あーこんな綺麗な空見たら、レポートに悩む俺は馬鹿らしい。 「そういや、あいつは元気にしてっかな」 高校卒業と同時に「留学するね、ばいばい」と勝手に海外行った馬鹿の存在を思い出した。当時は恋人同士と呼ばれるもので別れ話もそんなの無しにさっさと留学しやがって、って、あれ?あれから何年経ったっけ? レターケースを漁り、白い封筒を取り出す。えーと、確か。 『すぐに読んじゃ駄目だから。銀時がもう少し大人になったら読んでね』 律義に封も開けず、でもそこまで大事にもしていなくて、ぽいっと放り込んだレターケースの中のそれを手に取った。そこには「自然消滅なんて許さないから」や「浮気したら殺す」なんて物騒なことが書かれていた。 「自然消滅もクソもねェだろうが」 まあ、こいつ以外に好きになった女も他にも居らず、寂しく1人で過ごしてるっつの。 「追伸……帰ってくるまで待っててね、……阿呆か」 瞳を閉じればまぶたの裏に彼女が現れる。今も色褪せない笑顔の彼女が。今はまだ、傍に居ないけれどそれだけでなんか幸せな気分になれた。向こうに居るお前もそうだったらいい、なんてベタなことを考えながら手紙を元のレターケースへと直した。 110309 |