2011 | ナノ





今日は世の中の男が色めき立つ日。そう、バレンタインデーだ。普段はやる気のない俺も真面目に制服を着たり、髪の毛をちょっとアイロン掛けたり……あ、そこ!意味がないとか言うな。俺だっていつかはサラサラストレートに……ってそんなこと話したいわけじゃなくて、




「つまりチョコとやらが欲しい?くだんねぇな」

「全くだ。そんなことをしなくてもチョコレートの一つや二つ貰えるに決まってるだろう」

「ヅラ、てめぇどうせ母ちゃんや妹だろうがそれぇぇぇぇ!つーか高杉はくだんねぇとかほざいてても貰うもん貰ってるくせになんだそれぇぇぇぇ!」

「あっはっはっ。そう叫んでおったらおなごは渡しにくいのぅ」




割り箸が真っ二つに折れ、箸の意味がなくなったそれを机に叩き付けて叫ぶ。いつものように学校に行き授業を受け、今は昼休み。
高杉、ヅラ、辰馬と教室の陽当たりの良い窓際での昼食はバレンタインの話。
高杉はめんどくさそうに足を組み、紙パックの茶を飲んでいる。既に奴の机の上は派手にラッピングされたチョコレートが無造作に置いてある。桂は弁当を細々と食いながら、自分の机の中を見た。ちらっと見える箱はきっとチョコだろうが、あれは絶対ヅラの母親からだ!辰馬は……昼飯代わりにチョコレートを食べている。


どいつもこいつも貰いやがって!!!





「ったく、その辺の女があげたがってんだから貰えばいいだろうが」

「それもそうじゃのう。貰えないわけじゃなかろうに」

「うるせー!」



そう、貰えるといえば貰えるのだが、名前も知らない女から貰っても嬉しくない。




「素直じゃねェな」

「全くだ」

「ちっ、仕方ねーだろ」




本命からのチョコレート。それを俺は待っていた。だけど、残念ながら叶わない。何故なら本命の彼女は風邪で寝込んでいるから。移すから来るなと言われ、チョコレートは貰えないわで落ち込む1日。なんかこういうのは当日に貰えるのが一番良いわけで、とりあえずへこむ。




「どーせいじけてるだけですよー女々しくてもイベントって大事だろうが」




「……あ?」

「……ふむ」

「……おぉ」



机に顔を突っ伏すと同時に3人一斉に言葉が揃う。更にブブブ、と携帯が震えて仕方なしに携帯を開いた。







早く降りてこいばーか!








ニヤニヤと笑う男共の視線は窓の外……つまり校門に向けられていて、メールの意味に気付いたのはその後。


マフラーをぐるぐる巻きにして校門に立つ女を見つけてからのことだった。








(おま、馬鹿だろ?!)

(アンタのことだから拗ねてると思ってわざわざ持ってきたんでしょーが。ゴホッ……)

(うあああ、喋んなっ、つかサボって家送るからァァァァァァァ!)







100214




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