あー疲れたよ。うん、ほんと。今日も日付が変わるまでバイトして、家帰ったらレポートにでも取り掛からねェとなァ、なんて、廃棄の商品が入ったバイト先のコンビニ袋を片手に思う。10月に入り、秋の気配っつーか、もう冬に近いだろって気温はつい最近まで夏だったはずなのに極端過ぎて、なんとなく良い。トボトボと歩いて住んでいるアパートが見えてきたところでずっと放置していた携帯を開いた。 「なんだよ、迷惑メールか?」 新着メールが4件。電話も3件入っていた。連絡があまり来ない俺の携帯にしては珍しい。電話の3件は全て恋人からだ。これは後で掛け直すとして、受信ボックスを開く。 アパートの階段を静かに昇って、ヅラからのメールを見ようとした瞬間。 「遅い」 「!びっ……くりさせんな!」 部屋の前でしゃがみこんで携帯をカチカチと弄りながら、彼女は言った。 「おま、今日来るとか聞いてねェよ」 「バイトだってこと知らなかったし、教えてくれてもよかったよね」 「いや、聞いてる?」 「聞いてる。バイトお疲れさま。あー、また廃棄持って帰ってきてる。栄養バランス崩すって言ってるじゃない」 立ち上がった彼女はショートパンツを払って、俺の持つコンビニ袋を見た。 「食費浮くんだから仕方ねーだろ。つーかほとんどデザートだし」 「もう。折角ケーキもご飯の材料も持ってきたのに」 「飯はともかく、ケーキ?珍しいじゃねェか、なんだ?今日は記念日だっけ?それとも誕生日?」 なんて冗談めかして言えば、じとーっと睨むような目線が突き刺さる。あ、れ……? 「10日。……になってもう1時間以上経ってる」 「あー……そっか、誕生日だっけか俺の」 ということは着信も、ヅラたちから来たメールもそういうことね。納得して、気恥ずかしくなって頭を掻いた。 「銀時のことだから忘れてると思ったけど、まさか家に居ないなんて誤算だった」 「うん、悪ぃ」 名前に近付き、膨れた頬を突いた。馬鹿、と小さく言う彼女を抱き締めて、あぁ、と頷く。 「年に一度しかない日を祝ってくれるんだもんな、お前ェは。俺、ほんとに馬鹿だな」 「馬鹿。ほんっと馬鹿。……でも、おめでとう」 ぎゅっと背に回された腕の力より更に強く抱き締めて、ありがとう、と一言。 でもどうせなら 0時丁度に祝いたかった (毎年0:00に祝い続けたかったのに) (あーもう悪かったって!) 111013 title/家出さま |