2011 | ナノ





「あのね、銀ちゃん、聞いてもらいたいことがあるの」

「あーなんだよ」

「私ね、」



じっと、見つめる名前の顔は真剣で、ごくりと息を飲んだ。




「私、銀ちゃんのことが好きじゃなくなった」












「別れよ?」


















「……夢かよ」




それにしてはリアルな夢だ。最悪な寝起きなわけで、俺は夢の最後に見た名前の笑顔に震えた。まだ暗い外だけど、二度寝をする気にはなれない。
しかしこんな夢を見るのも自業自得だ。最近名前と会っていなければ連絡すら取っていない。理由は簡単。俺が社会人だからだ。名前はまだ学生。即ち学生より時間の余裕がない。
高校が一緒で、その頃から付き合ってきたせいか卒業してもなお、お互い学生気分の名前。最近は名前もわかってきたのかなにも言わない。




「甘えすぎてんだなあ……」




いや、追い詰められている?でも名前の大事さがわかってきた俺は単純だ。会っていなければ、連絡すら取ってない。付き合っているのかわからねェな、こりゃ。浮気してたらどうすっかな。もし浮気相手に本気だったら、というか自然消滅してね?え、大丈夫、これ?



血の気が引く。いや、名前はああ見えて一途だし、大丈夫だって、でも意外と単純で鈍いし頼まれたら断れないし、もし合コン誘われて行ったらアイツ可愛いし、口説かれたら……。




「そんなわけあるかァァァ!!大丈夫、名前は大丈夫!なにこれ、俺疲れてんのか?そうだよな、ああ、寝るか、うん」




布団を被って、目を閉じる。目を開ける。閉じる。開ける。




「弱ぇなあ」




そう自嘲を込めた、ため息を吐くと暗がりの中、充電器のコードを手繰りよせ携帯を開いた。メールが1件。送信者は……。




「……よし、寝るか」




まだ深夜と呼ぶべき時間、遅いメールの返信をして、今度こそ俺は眠りに就いた。大事にしないと捨てられる。プロポーズ紛いの返信は名前にはどう映るだろうか。




その反応は、また明日にでも伺えばいい。







君とじゃないと息ができない








title/√Aさま



110810




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