「あのね、銀ちゃん、聞いてもらいたいことがあるの」 「あーなんだよ」 「私ね、」 じっと、見つめる名前の顔は真剣で、ごくりと息を飲んだ。 「私、銀ちゃんのことが好きじゃなくなった」 「別れよ?」 「……夢かよ」 それにしてはリアルな夢だ。最悪な寝起きなわけで、俺は夢の最後に見た名前の笑顔に震えた。まだ暗い外だけど、二度寝をする気にはなれない。 しかしこんな夢を見るのも自業自得だ。最近名前と会っていなければ連絡すら取っていない。理由は簡単。俺が社会人だからだ。名前はまだ学生。即ち学生より時間の余裕がない。 高校が一緒で、その頃から付き合ってきたせいか卒業してもなお、お互い学生気分の名前。最近は名前もわかってきたのかなにも言わない。 「甘えすぎてんだなあ……」 いや、追い詰められている?でも名前の大事さがわかってきた俺は単純だ。会っていなければ、連絡すら取ってない。付き合っているのかわからねェな、こりゃ。浮気してたらどうすっかな。もし浮気相手に本気だったら、というか自然消滅してね?え、大丈夫、これ? 血の気が引く。いや、名前はああ見えて一途だし、大丈夫だって、でも意外と単純で鈍いし頼まれたら断れないし、もし合コン誘われて行ったらアイツ可愛いし、口説かれたら……。 「そんなわけあるかァァァ!!大丈夫、名前は大丈夫!なにこれ、俺疲れてんのか?そうだよな、ああ、寝るか、うん」 布団を被って、目を閉じる。目を開ける。閉じる。開ける。 「弱ぇなあ」 そう自嘲を込めた、ため息を吐くと暗がりの中、充電器のコードを手繰りよせ携帯を開いた。メールが1件。送信者は……。 「……よし、寝るか」 まだ深夜と呼ぶべき時間、遅いメールの返信をして、今度こそ俺は眠りに就いた。大事にしないと捨てられる。プロポーズ紛いの返信は名前にはどう映るだろうか。 その反応は、また明日にでも伺えばいい。 君とじゃないと息ができない title/√Aさま 110810 |