銀ちゃんが冷たい。構ってくれないというか、いや構ってはくれるんだけどすぐに終わって、ジャンプを読んでいる。いつものことといえばいつものこと。 「……んだよ?」 「なにもー」 2人きりの万事屋は静かで、ページの捲る音すら聞こえない。なんか、居づらい。いつもと同じ、いつもの銀ちゃん。 (あ……、そうか) だけどその疑問は直ぐに解消された。銀ちゃんとキスをしていない。2人のときは神楽ちゃんや新八くんが驚く……引くぐらいの甘えたさんになる。とにかくスキンシップが激しい。そのスキンシップはあるのだけど、キスは全くだ。 いつの間にかジャンプを読んでいた銀ちゃんは後ろから私を抱きしめ、髪を弄んでいる。 「ねー?」 「んー?」 「今日の銀ちゃん、いつもの銀ちゃんじゃないね」 「……そうかァ?」 そうだよ。悟られぬように銀ちゃんは飄々と返すけど、びくりと固まった身体はごまかせられない。ね、よく見てるでしょ、私? 「名前?」 「銀ちゃん、キスしたい」 「おいおいおいおい……またえらく積極的じゃねェか……いやいやまてまて落ち着け俺」 「その独り言筒抜けなんだけど」 「はいはいストーップ!名前ちゃん、ちょっと落ち着こうか、ね?銀さんが悪かったって」 焦る銀ちゃんは私の下。着流しを掴んで顔を近付ける私。けれど身体はすぐに退けられた。 「えーと、つまり?」 「手が早い銀ちゃんがキスしてくれなかったんだもの」 「だもの、じゃねェェェェェェェェ!!いや確かに嬉しかったよ、俺ァ。珍しく可愛い可愛い名前ちゃんから迫ってくれるなんてよォ……」 「じゃあなんで拒否するのよ?まさか浮気してるとか……」 「ないない!まじでないからそれは!名前一筋だからァァァ!!」 「……ほんとに?」 ごほん、と咳をして銀ちゃんは悪かった、と呟く。浮気を認めるのだろうかと思えばそうではなかった。 「風邪気味、なんだよ今」 「うん。……だから?」 「だ、だからよ、キスなんてしたらお前に風邪移しちまいそうだろ?」 「……」 「あ、今笑った!笑っちゃったね君!はあああ……だから言いたかねェんだよ、こういうこと」 「どうして?」 「こう、なんつーか、もっと自分の女に対してはクールにいきたいわけ」 「銀ちゃん、顔真っ赤」 「うるせー笑うんじゃねェよ」 涙でふやけたドラマチック (だから、また今度) (仕方ないなぁ) title/√Aさま 110803 |